2016年09月21日

足の裏で幸せを感じる現場

世の中に花から生まれる床材がある。

初夏に青い亜麻の花が咲き、
咲いた後の種から亜麻仁油が摂れる。

そして亜麻仁油はリノリウムの原料になる。

亜麻仁油にコルク、木粉、石灰岩を混ぜ圧着して、
長尺床敷材リノリウムが作られるのだ。

1474466115.jpg裏にはジュートが使われ、
素材に柔軟性を与えるため

石油化合物ではなく、
松の樹液が使われている。

現代のコピー&ペーストのプリント技術では
表現できない天然の柄は、

バッハの音楽のようにリピートがなく、
生成を続けて飽きることがない。

そしてマットな色彩も魅力的だ。

合成顔料や重金属を一切使用せず、
天然色素で色付けされているからだ。

1474544205.jpg今残念ながら日本には、
石油系のビニール床材しかなく、

床の長尺材で天然のものを扱うメーカーは
なくなってしまった。

昔は郵便局や百貨店などの床に使われていたけど、
東京丸の内ビルに土足遣いで、
すでに60年使用経過しているものがあって、

その耐久性は実証されている。
医療施設などの実績でもクレームがないようだ。

抗菌性、清掃性にも優れ、
100%土に還る。

元々土足の文化ヨーロッパで生まれたリノリウムだけど、
素足の日本の家屋にも使わない手はない。

転倒時の衝撃吸収性に優れているし、
とにかく足の裏が気持ちいい。。。

ちなみに亜麻の茎の繊維からリネンができるんだけど、
人類最古の繊維で、ランジェリーの語源にもなっていて、

1474616884.jpg肌に優しくサラッとして、
コットンやシルクに比べて、
吸水性・発散性に優れている。

繊維の中には空気が含まれているから
保温性もあり、オールシーズンに適している。

リノリウムも湿気の具合で色の濃淡ができるほど、
確かに呼吸していて、下着のような心地よさがある。

施工はやはりビニール床材より曲りにくいから手間はかかる。

今回は暖かい季節だからよかったけど、
冬にはトーチであぶりながら、
ならすのにも時間がかかる。

今回も狭いトイレの床だけは
型を取ってカッティングしてから貼った。

壁を傷付けるからだ。

1474544265.jpg想像した通り、木との相性は抜群だ!

天井の木の流れに合わせて、床も長手方向に
目地を堀り、溶接でラインを作る。

掃除と2度目の床養生をして
また真っ新な現場になった。

床が浮いている箇所発見。
掃除と床養生は、職人さんの仕事の跡を確認し、
チェックも兼ねる。

来週から再び3人の大工さん、
仕上げ工程の職人さんたちを迎えます。

長くなったので、

つづく。


司建築工房

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posted by Koji at 22:53 | TrackBack(0) | 現場

2016年09月20日

現場は最高のアトリエ

建築を考え、建築を作る、
人生にこんな楽しい生き甲斐があるだろうか。

壁と天井に生命感のある木を張った現場にいると、
人を温かく包み込む普遍的な安心感があります。

本物のクオリティーを持った建築を提供できる
意義ある仕事に喜びを感じるものです。

無垢の木と長く付き合っていくために
塗装は欠かせません。

木の調湿作用を妨げることなく、木の質感を活かす
浸透性の植物オイルを塗りました。

オイルフィニッシュならではのしっとりとした仕上がりで、
乾拭きでメンテナンスしていきます。

1474265018.jpgストーブ廻りの炉台と炉壁は、
下地の胴縁を含めて

不燃材で二重空気層構造にして、
耐熱・防火対策をしてあります。

燃焼装置・暖房装置として
その能力を発揮するために

デリケートな通風計画が大事で、

建物全体で微差圧を測り、
給気口を調整しました。

ブリックは焼き物ならではの自然なムラと粗面なもので、
出隅の曲がりを特注の寸法で焼いてもらい、

このブリックを引き立たせるための目地は、
骨材を混ぜたザックリとした白系のブリック目地で、

ブリックの厚みを消さないように
深目地で陰影を出します。

1474356063.jpg床にマーモリウムを貼るため
ひとまず床養生を撤去して掃除。

これまで解体、電気配線のやり変え、
電磁波シールドシート張り、

空間の形を変え
本物の木を張ってきた現場の
床養生が一つの役目を終えました。

将来的に下地の細かい凹凸が出ないように、床のパテ補修を行い、
ケレン・掃除をして、マーモリウムの仮敷きとカッティング。

1474459170.jpgマーモリウムを貼りつける前に、
下階の分電盤、

電灯配線・照明器具からの
低周波磁場を遮蔽するために、

シールドシートを敷き込みました。


1474265044.jpg大工さんの作業場では、机やテーブルなどの
家具製作にかかっています。

一貫性のある文法でデザインした家具が
生れてくることはとても楽しみです。

今回は家具屋さんではなく、
製材で挽いてもらった無垢材を使って、
大工さんにすべての家具を製作してもらいます。

手作りで形作られていく過程は
かけがえのない僕の生き甲斐だ。

つづく。


司建築工房

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posted by Koji at 19:01 | TrackBack(0) | 現場

2016年09月14日

お茶事を愉しむ秋

現場から帰る道すがら、日の暮れるのも早くなり
車窓を全開にすると涼しい秋の風が吹き抜ける。

秋の虫の鳴き声がする道を選んで。

月に一度月釜にお招き頂ける光栄に浴して
4年目を迎えておりますが、

仕事に明け暮れる日々の中で、この日だけは
他では味わえない贅沢なひとときに身を置きます。

お茶席にて季節を五感で味わう総合芸術は、
日本人の繊細な感性や精神性、美学まで詰まっています。

先月のお茶事は、お茶碗をはじめ
すべてガラスのお道具立てという
めったにお目にかかれない景色の中、

冷たいものを頂かなくても
こんなにも涼しい気分になるものかと感動しました。

今月の重陽の節句のお茶事は、亭主のお着物から
お菓子、お菓子器に至るまで、菊づくしのお道具立てで、

毎回亭主のおもてなしの尊いお心がひしひしと伝わり、
頭が下がる想いになるのでした。

江戸幕府から始まった五節句の風習では
植物(重陽の節句は菊)が邪気を祓うという

無病息災の願いも込められています。

京都平安堂さんの表装によるお掛け軸は、
大徳寺住職の揮毫「掬水月在手」

重陽の節句のお茶碗にて最後にお出し下さったお白湯に
中秋の名月を妄想して浮かべてみた。


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posted by Koji at 01:08 | TrackBack(0) | お茶

2016年09月11日

弦楽の響きに癒される秋

最近は、食事の時や夜のリラックスタイムに観る
パラリンピックの選手たちに
オリンピック以上の感動と勇気をもらっています。

ハンディのあるところからスタートして、
健常者以上に努力・修練を積み重ねた人たちだ。

弦楽器を習得する道にも通じるものがあります。

さて、五嶋みどりさんのチャイコフスキー協奏曲を
鑑賞してきました。

努力・修練を積み重ねて舞台に立つ姿がここにもある。

メンデルスゾーンと共に好きな曲のひとつだから
生演奏を聴く時間は特別だ。

超絶技巧の難曲を巧く弾くなーという感じの演奏ではない。

技術的な難しさから完全に解き放たれて、
全身で音楽表現のみに集中する表現者と云おうか。

求める音色を紡ぎだすために
覚え込ませた身体が躍動する姿は
鍛え上げた舞踏家のようだ。

6月にもみどりさんの演奏を聴く機会があって、
その時はリスト、モーツァルト、クライスラー、シューベルト
でしたが、

それぞれの曲想に即した音色と
やわらかいタッチが印象的でした。

今回も時に、海へ急降下して魚を捕まえる鳥のように
弓が弦にアタックするのだけれど、

実にいいニュアンスの音色です。

幸運なことにアンコールで
バッハの無伴奏を2曲聴かせてくれました。

教科書的ではない、アイデンティティーのあるバッハは
目頭が熱くなり、心に沁みました。

もうひとつ、広上淳一さんの指揮による京響が
アンコールとして聴かせてくれた武満徹のワルツ。

僕は初めて聴いて気に入りました。
帰って調べてみたら、
映画「他人の顔」(1966)で使われた曲のひとつらしい。

最近仕事の合間に機会を見つけて鑑賞するのは
チェロをはじめ、チェロ四重奏や弦楽四重奏なんだけど、

この弦楽合奏の音の重なりでできる
温かくて深みのある音色に癒されます。


司建築工房

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posted by Koji at 16:36 | TrackBack(0) | 音楽