2016年11月18日

現場は時間と空間を超える

紅く染まった山々を車窓から楽しみ、現場へ着くと

僕の愛する建築が美しい石積みを纏って、
大地の上で出迎えてくれた。

1479471510.jpgすっかりこの場所に
馴染んでいるように見える。

鳥たちが自分たちのために
世界が時間と空間を
用意しておいてくれたことへの

喜びと感謝を歌うように、

僕はこの感動の時空を胸に刻み、
地霊に感謝と引き続きの祝福をお願いした。

この石はある山で採れた貴重な石で、
今では採掘が禁止になっていて、
文字通り最後の石なのだそうだ。

1479471547.jpg貴重な石はこの建築がある限り
語り継がれることだろう。

そして石積み職人は有名な腕利きで、
ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、
世界中から呼ばれるとのこと。

彼の仕事は一日に一坪しか進まない。

場面場面で素敵な遊び心とリズムを取りながら
その場所に相応しい形の石を見付け出し、

時に加工し、形造っていった仕事の跡は
見る者を釘づけにする。

写真に収めたい衝動に駆られた僕の脚の上で
橙や黒のてんとう虫たちが、
羽根を広げたりしてずっと踊っている。

1479471577.jpg茶色がかったグレーの石。
窓廻りの造形イメージ。

素材の質と色でこの建築のクオリティが決まる。
色々お伝えしたけれど、

監督がこの職人を人の紹介を通じて
引っ張ってきてくれたことは、
思いがけない幸運な出来事だった。

シモサカサン、このデザインの発想は
精霊が降りてきたのか、と監督が聞いてきた。

それはどうかわからないけど、
この土地に立った時、
四角いグリッドじゃないって直感したことは確かだ。

1479471631.jpg建築はどうしても自然にはない
直線になるのだけれど、

幾何学で自然に少しでも
寄り添いたいと想っている。

この図面を見た時、今まで見たことのない
面白そうな建築だと思ったけど、

いざ施工してみると大変で逃げたくなった、
と笑いながら語る監督の表情は
前回よりも緩んでいる。

監督は続けた。
この建築が完成したらたぶん
シモサカサンと同じ気持ちを味わえると思う。

まだまだ内装、建具、設備、家具と来年まで現場は続きます。

1479471681.jpg図面を読み切れていない部分を
再度説明したり、
ひとつだけ手直しもお願いした。

浴室の壁、浴槽廻り、床のスノコも図面通り
クレームを恐れず木でやってほしいこと。

ストーブの煙突の施工、キッチンの屋根排気、
トップライトの通気ガラリ、建具と硝子、
マーモリウムの施工、家具の共通納まり。。。

色々お伝えして、完成は楽しみだけど、
早く終わってしまうと淋しくなる、
そんな現場をあとにしたのでした。


司建築工房

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posted by Koji at 21:23 | TrackBack(0) | 現場

2016年11月15日

竣工の火入れ式

現場は養生シートを撤去し掃除をして、
カーテンを取り付けました。

レースのカーテンは、
電磁波シールドカーテンになっています。

現在製作中の椅子等納品が残りましたが、
お施主さまは、遊び心のある家具や全体の調和と色遣いを
大変気に入って下さいました。

1479129432.jpg街の木々が色づきはじめた秋の日、
無事竣工を迎え、
薪ストーブの火入れ式を行いました。

お施主さまに記念すべき点火をして頂き、
火のある生活の幕開けです。

暖炉屋さんも絶賛の
床強度と壁の防火構造、

そして断熱材の入った二重煙突で
施工した薪ストーブは、

木もガスも煙もちゃんと燃えている
素直な炎を見せてくれました。

優しく暖めてくれる熱を身体に感じ、
揺らめく炎を眺めていると話が弾みます。

1479129348.jpg人類は新石器時代に家の中に炉を作った。

これこそ失われつつある民家に続いた
人が住む家の本質です。

自然と人間の文化が合わさる場所で
美しい炎を熾す美学。

人間のキリなき欲望と歴史や自然を無視して、
効率のみを追求する資本主義経済の行き詰まりと同様に

ここまでやるかという便利な家電や
空調さえあればいいという発想の家では、

人としての生活の温かみや心の豊かさを育む
本来の家の本質からかけ離れてしまっています。

1479129396.jpg太陽エネルギーによって育まれた
木と人が

大地の上で
本性のままに融合する。

この哲学を
これからも形にしていきたいと想う。


司建築工房

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posted by Koji at 00:01 | TrackBack(0) | 現場

2016年11月11日

感動の無伴奏チェロ

初めてアリサ・ワイラースタインの
無伴奏チェロリサイタルに足を運びましたが、
感動がいつまでも続いています!

前から4列目の席で、
最初の美しい生の音色を直接身体に浴びて
たちまち演奏に引き込まれました。

超絶技巧もさることながら、
基本的な音が美しい。

使用楽器はドメニコ・モンタニャーナとのことだけど、
熟練したボーイングの技術あっての音色だ。

終始涙が出そうな感動で、
演奏者の発するエネルギーだろうか、

20世紀の作曲家の作品では
チェロで表現できる最大限の魅力的な世界を堪能し、

バッハも情熱的かつ内省的に
チェロと一体化した音楽が会場に紬ぎ出され、

素敵なひと時を魂に刻んだ。

音楽を通して人は人のための
特別な時間と空間を作り出す。

銃弾の飛び交う中で最後まで演奏活動をやめず、
ファシズムに抵抗し続けたパウ・カザルスが思い浮かんだ。

13歳のカザルスは埃にまみれた
バッハの無伴奏チェロ組曲の楽譜を古書店で見つける。

彼は奏法を改革し、チェロを歌う楽器にした。

1479208690.jpgアンコールは2曲
バッハを聴かせてくれた。

バッハの音楽は時間と空間を超える。

チェロ1本での
深く豊かな表現力。


感動を与える音楽は、観客に訴えかける
人間力なんだと思う。

演奏終焉後のサイン会での
自分の順番の間、

僕は英語で感動を伝え続けた。


司建築工房

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posted by Koji at 22:45 | TrackBack(0) | 音楽

2016年11月04日

現場は最終章へ

常任指揮者の僕としては最後のフィナーレに向かって
これまで積み上げてきた集中力で
職人合奏を指揮しています。

毎朝現場までの車中は、ヴィヴァルディの四季♪

今年のクリスマスにチェロで参加することもあるんだけど、
テンションが上がります。

1478266373.jpg現場は薪ストーブと煙突を設置し、
スイッチ、コンセント、ライトを取り付け、
現場に照明が灯りました。

大工さんが残りのテーブル2つとソファ台、
ベットの組立て、階段の手摺、タオル掛け、
全て壁や家具と同じ木で製作しました。

1478266442.jpg
建具屋さんが引出の取付け、
エアコンガラリ、建具の吊り込み。

それに塗装屋さんがオイルフィニッシュ塗り。

掃除屋さんにガラス窓を中心に
掃除してもらい、

ガラス面にあらかじめカットしておいた
電磁波防止フィルムを貼ってもらいました。

最近は、銀行通帳やカードの磁気が
壊れるケースが急増していて、

携帯電話をはじめ空気中の電磁波放射量が
格段に増えているのが原因という話を
工員の方から聞いたのでした。

外国人観光客の拡大に向けた街の無料公衆WIFI化や交通網など
街に出たら電磁波に晒される世の中で、

避難場所としての住宅を考えなくてはならなくなった。

1478266506.jpg今週は胡桃割り人形の第2幕のようで、
職人が帰った後、
毎日掃除と翌日の現場の準備で、

先週末から今週もずっと
現場に張り付いています。

実は僕も一奏者でもあり、ワーロンシートを
カットし、曲げ加工を施し、貼り込みました。

1478266411.jpg最上階のテラスから大都会を眺める以外は、
閉じた建物なんだけど、

壁を隔てた内部は街にはない大地から繋がる
自然の息吹を感じて、外の喧騒を忘れます。

お施主さんの好きな山のエネルギー、
山の空気を感じてもらえる空間。

職人さんが、頭の中でどう考えたら
こんな建築になるのかって聞いてくれた。

確かに頭の中で考えたことが現実になるんだけれど、

「建築家は建物を使う人、そこに住む人の気持ちを
汲み取ることに尽きる」

急に冬が到来したような一週間でしたが、
家に帰ると暖炉に火が揺らめいていた。


司建築工房

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posted by Koji at 22:55 | TrackBack(0) | 現場