我が家でも暖炉に火を熾し、火の神に酒を供えた。
今年は庭の木の葉の色付きも鮮やかで、
ゆずが黄色くなり始めた。
師走が間近に迫った近頃は、
好きな刳物の漆器を事務所に並べて
時折触っているんだけど、
深紅(ふかきくれない)のチェロケースと共に
朱漆のアカが生命感を与えてくれる。
ご本人にお目に掛かるため銀座へ出掛けた。
ペーパーで木を擦らない生命感は、
いつか見かけた野生の鹿の輝きを彷彿させた。
腰のラインにピタッと納まる心地よさと手触り。
三次元ルーターでは出せない何かが伝わってくる。
人の心を打つ技術力を支える道具は、
見たことのない指先に収まる自作の鉋台に、
光り輝く玉鋼の刃で、
握らせてもらった。
火山によって地表に噴出した
花崗岩の風化による砂鉄を
粘土の炉で還元するタタラという
原始的な方法で鉄を取り出すらしい。
工業製品に囲まれた現代にあって、
人の手で作る意味を共感でき、
良き精神性に触れると
何も要らない幸福感に包まれる。
新建材に囲まれてしまったら、
我々の想像力や感性は鈍るばかりだ。
人間は自然から遠ざかると病的になる。
僕が独立した2000年以前から人々は、
便利・快適を追求してイライラしていたけれど、
今や、AIやロボットに
人間の営みの一部を担わせようとしている。
日々の暮らしを支える住処や家具や料理は、
人の手で作ることが肝心だし、手掛ける醍醐味は失くしたくない。
取り分け、場というものが重要だと思うのだけれど。。。
人を癒し英気を養うのは、自然の生命力しかないのだから、
大地の樹木のような建築をこれからも肌感覚で作っていこうと思う。
司建築工房
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