2017年10月07日

トスカーナの休日 1

フィレンツェから南へ。
FIAT500で、サン・ジミニャーノに立ち寄りながら、
ピエンツァへお出掛け。

車窓から眺めるトスカーナの
折り重なる丘陵の景色は、飽きることがない。

丘陵のなだらかな斜面に幾つかの塔が立つ集落が見えた。

tucasa_s.gimignano_ 1004_R.JPGこのサン・ジミニャーノの城門をくぐって、
僕が好きなチステルナ広場を目指す。

12世紀頃の建物に囲われた三角形の広場は、
自然の地形のまま傾斜していて、
真ん中に13世紀の井戸がある。

この井戸を囲む石段に
人々が気持ちよさそうに座っている。

あらゆる世代の人々が町の中心の広場に出て、
ひと時を過ごす光景は、本来の人間的魅力に溢れた町の姿がある。

中世の富と権力を誇示する象徴の
塔の大半が壊されている現在にあって、
かすかに塔が林立する街並みを留めている。

丘陵地の丘の上に城壁で囲われた中世の街並みは、
自然の地形に寄り添うように限られた素材で作られていて、

自然発生的に不規則で変化に富んだ集落は、
歩くごとに絵になる風景に出会える。

建物の外壁が街路の形に変化を与え、
蛇行した通りや狭い路地は、自然のまま起伏に富んでいて、

地元の業者さんの車以外はないから、
この魅力的な迷宮空間はしばらく時を忘れてしまった。

さて目的のピエンツァの集落がトスカーナの丘陵の上に見えてきた。
ここは、人文主義者のピウス2世が、
「建築書」を書いたアルベルティに紹介されたロッセリーノと共に

生まれ故郷の中世の街並みの一部を
ルネサンスの理想の広場に改造した街だ。

しかも中世の絵画的で有機的な街並みと調和して、
550年経った今でもそのまま保たれている。

tucasa_pienza_ 1173_R.JPG広場の形はフィレンツェのところでも触れたけれど、
逆台形で、広場の正面にある

以前は宗教的理由の伝統方位である東西軸の
ロマネスク様式の教会堂を壊して、

広場の正面のファサードを
ルネサンス様式の南北軸の教会に建て替えた。

広場の右側パラッツォ・ピッコロミニのファサードは、
フィレンツェのパラッツォ・ルチェッライの言語そのままに、
幾何学的なシンメトリーは、トスカーナ地方のパラッツォ風だ。

丘を見下ろす南側は、1階が庭に面する柱廊で、
2階はテラスになっていて、
田舎のヴィラの要素も持ち合わせている。

教会とパラッツォの間から垣間見えるオルチャの谷の遠景が、
ピエンツァならではの広場の風景になっている。

tucasa_pienza_ 1130_R.JPGパラッツォは広場と街路に面して、
石のベンチになっていて、
地元の社交場になっているようだ。

広場の隅に井戸があるんだけど、
地元のおっちゃんがこの井戸に集まって、

通りの向かいのお店に寄ったおばちゃんを
からかっている日常風景は微笑ましかった。

ルネサンスの広場の特徴である
中心や軸線にモニュメントを置くところを

ここでは広場の多目的な使い勝手を優先して、
井戸を端に寄せているのは、中世の作り方だ。

広場以外の中世の街並みとの
頃合いを計ったのだと思う。

ルネサンスの理想表現をするよりも
周りの環境との誠実な対話を優先させたのだ。

広場の左側もパラッツォで、広場の通りを挟んだ手前の
向かい側のパラッツォには柱廊があり、
シンボル的な教会を眺める景色を楽しむのに一役買っていると思う。

オルチャの谷を見下ろす丘の上の
東西400m、南北200mほどの小さな集落のピエンツァは、
トスカーナでも最も美しい自然風景に恵まれたところにある。

車は全て城壁の外に停めるから、
城壁の中は人のための迷宮空間で特別な場所になる。

tucasa_pienza_ 1319_R.JPGこの自然の地形に寄り添うように作られた
土着的な味わい深い街並みは、

現代の無機質で画一的な都市空間で失われた
人間性を呼び覚まして、
歩くごとに新しい素敵な風景を発見できる。

日が暮れてから、雨が降り出した。

雨に濡れた一つ一つ違う個性の石畳や
杉綾模様の煉瓦の街路が、
オレンジ色の街灯に照らされていた。

つづく。

司建築工房

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 大地の樹木 本物の素材 火のある生活















posted by Koji at 20:14 | TrackBack(0) | 建築ツアー
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