2017年10月06日

チョイ住み in Firenze 5

高度な都市文明を築いた古代ローマ人は、
しばしば都市を離れ、田舎で労働をし、

自然と接触することで、
健全で強靭な人間になれると考えていて、

都市生活がもたらす不健康は、
結局は国家の基盤を揺るがすことを知っていた。

古代ローマ人の伝記を読んだ裕福なフィレンツェ人は、
農地を買い、別荘を建て、古代ローマの
理想的な生活を再現した。

tucasa_firenze_ 668_R.JPGリッピに師事したボッティチェッリの
「プリマヴェーラ」と「ヴィーナスの誕生」。

メディチ家のカステッロの別荘に
飾られていたという対をなす作品は、

宗教的モチーフを題材にしたものではなく、
ギリシャ神話に因んだ題材で、

古代ローマ時代の人間性の再生、
人間と自然の美を表現した立体感と物質感は、
ルネサンスの息吹を感じる作品だ。

生でじっくり観ると植物等実によく描いてあって、
ヴィーナスの表情になぜか泣けてきた。

ヴェロッキオに師事した20歳のダ・ヴィンチの「受胎告知」は、
すでにスフマートの技法や遠近法で描き、
大天使ガブリエルのまなざしに心を惹きつけられる。

tucasa_firenze_ 670_R.JPGミケランジェロのドーニ家の結婚祝いとして
描かれたという唯一のタブロー「聖家族」は、

マリアも子供のイエスも
筋肉質の彫刻的な人体表現で、

地面に腰を下ろして夫のヨセフと共に
幼子を肩ごしに抱えるという母として描いている。

当時のままの額縁もこの絵画も隅々まで
意図を想像しながら眺めた。

ジョット以降、ラファエロの「小椅子の聖母」や
ティツィアーノなど、ルネサンスのマリアは
一人の女性として描かれるようになった。

ヴェッキオ宮殿のある中世の広場、シニョーリ広場の
ランツィの回廊には、野外美術館のように

メドゥーサの神話に因んだ「ペルゼウス像」や
ローマ建国の神話に因んだ「サビーニの女たちの略奪」がある。

tucasa_firenze_ 596_R.JPGそこからアルノ川に続く
ウフィツィ宮殿の広場のような空間は、

ドリス式の回廊のある建物に囲われた
親密感があって、ワルツのように

リズミカルな回廊柱には、3本ごとに
ルネサンスの偉人たちの彫像が飾られてある。

ローマ時代に起源を持つポンテ・ヴェッキオは14世紀に再建され、
16世紀にウフィツィとともにヴァザーリの回廊が造られた。

3つのアーチ構造で建物を載せたユニークな橋は、
中央にアルノ川を眺める三連アーチのロッジアになっている。

先のランツィの回廊も三連アーチだったけれど、
ミケランジェロはシニョーリ広場全体を
このアーチで囲むことを考えていたようだ。

フィレンツェの歴史が詰まった物語の遺産には、
支援した人がいて、芸術家が才能を発揮して、
それを保存修復に努めた人がいて、

愛しんで鑑賞した人々がいたからこそ、
こうして望めば感動に浸れることができるのだ。

フィレンツェでのルネサンス期に支援した
メディチ家などの功績は、
やはり後世に語り継がれる偉業だろう。

tucasa_firenze_ 360_R.JPG現在でも世界遺産や芸術作品の修復費用は、
入場料以上に

民間企業の寄付によって守られていることは、
ローマのところでも書いた。

サン・ジョヴァンニ洗礼堂にある、
ギベルティが27年間製作に没頭したという

通称「天国の扉」のレプリカ製作は、
日本の茂登山長市郎さんの寄贈だ。

市民が住みたいと感じる、
世界の人々が訪れたいと思えるまちづくりの陰には、

文化財と名の付く保存ではなく、
名もない歴史的建造物が集まった街の保存を

名もない一人ひとりの建物所有者や
商業を営む経営者一人ひとりが、保存再生に投資をし、

建築家が魅力的なレスタウロをし、
そのほとんどが民間工事によって

都市の保存がなされてきたことを
忘れてはならない。

司建築工房

♪・・・・・・・・・・・・・・・・・・♪
 大地の樹木 本物の素材 火のある生活


posted by Koji at 20:55 | TrackBack(0) | 建築ツアー
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