2018年07月06日

セナンクを訪ねて

ル・トロネ村で宿泊した
L'Ancienne Poste のオーナー、ポーランド出身のハンナが、
滞在中にしてくださったご好意は、一生忘れないだろう。

村には食材を買えるお店がないからと
遠くのスーパーに連れて行ってくれたり、
全てをここでは語り尽くせない。

次の巡礼地、プロヴァンス3姉妹の
ご次女さまに会うためリュベロン地方へ。

近くには、古城を頂として階段上に建物が折り重なった、
天空の城とでも呼びたくなるゴルド村があり、

tucasa_senanque_0896_R.JPGその丘に登り、今度は山道を下っていくと
ヴォークリューズの谷に
セナンク修道院がある。

最初は俯瞰して眺め、
徐々にコンバーチブルで降りてゆく
楽しみを味わったのだけれど、

山の頂上付近で、すでにラヴェンダーの香りが
風に乗って、入浴してるかのようだった。

かつてこの谷には、川が流れていたらしく、
水の需要を十分に満たしたらしい。

tucasa_senanque_1098_R.JPG石材は、北のひと山越えた辺りで採掘され、
石の屋根には、岩肌の見える
この丘のものが使われている。

日々の信仰と生活の機能に適うように、
回廊を中心として、3姉妹とも
ほとんど同じ規模と平面構成になっているけれど、

シトー会の思想が建築に表れ、
すでにゴシックの交差リブヴォールトを採用していて、
優れた音響効果を生み出している。

セナンクでは現在も修道生活が営まれていて、
聖堂の内部でグレゴリオ聖歌の神秘的な響きを聴いた。

谷の敷地の関係で、セナンクでは聖堂の内陣が、
東ではなく北向きになっている。

身廊の上部にはクリア・ストーリーが設けられていて、
新たな光のグラデーションの試みが感じられる。

下から見上げる窓のエッジと柱やアーケードの角の精度は、
ル・トロネと同様の精神性が宿っていた。

tucasa_senanque_1085_R.JPG回廊の柱頭彫刻には、
ギリシャのオーダーを想わせる

アカンサスの葉や
様々な植物文様が刻まれていて、

樹の不死を示すヘレニズムの普遍性の中に
ケルト的な葉や蔓の繁茂の思想が織り込まれている。

回廊の原型は、地中海沿岸で生まれ、
建物の内部に作られているから
外部の音は遮断され、静寂が保たれる。

モンテ・カッシーノ修道院には、すでに回廊があった。

ヴォークリューズの谷は、周りの山で隔絶されて、
修道院の他に建物は一つもない。

石の回廊でさらに隔絶された中庭の緑の静寂は、
あたかもヴォークリューズの閑居で頂く
一服の茶碗の茶溜まりのように思われた。

修道院の核心は、「ひとり」で住むことで、
砂漠や洞窟から始まり、東方に起源を持つ。

キリスト教は、コプトやユダヤ的閉鎖から
「ひとり」を尊重しながらも「共同」で隠修する
普遍へと開かれてゆく。

「サイエンス」誌上に掲載された、フランスの各地に残る
洞窟壁画を描いたネアンデルタール人は、孤立して滅び、

身体的に劣るホモ・サピエンスが集団生活をし、
宗教を持つことで連帯感が生まれ、
危機を助け合うことで生き延びた。

外に出て、日陰に腰を下ろしていると気持ち良くて、
辺り一面に立ち込めているラヴェンダーの香りに浴しながら
この風の谷の風景にしばらく身体を緩めることにした。

tucasa_senanque_0992_R.JPGリュベロンでは、あちらこちらの
ラヴェンダー畑に目を奪われた。

ゴルド村の近くに、ボリーと呼ばれる
板状の石だけで積み上げた、

新石器時代から伝わる建築で、
ローマ時代から続いていた集落があった。

笠木だけ板状の石を立てる石積みの塀も
この地方の伝統だろう。

tucasa_senanque_0965_R.JPGプロヴァンスでは二つのメゾン・ドットで、
19世紀のフランスの田舎暮らしを体験して、

旬の食材と手作りの心を頂き、
のんびり過ごせた。

心落ち着ける幾つもの景色は、
良き瞑想の助けになってくれるだろう。

ラヴェンダーの紫色が際立つ季節、
赤いひなげしの花と糸杉の長閑な風景に
心も身体も癒された旅になったのでした。


司建築工房

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 大地の樹木 本物の素材 火のある生活
posted by Koji at 21:51 | TrackBack(0) | 建築ツアー
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