これまでいくつもブログに書いてきた。
中世以来、広場は相互扶助の精神を育み、
運命共同体の縮図であり、私より公を優先させてきた。
ヴィジェーヴァノという田舎町の中心に
忘れ得ぬドゥカーレ広場がある。
ロンバルディア地方の自治都市国家は、
歴代の神聖ローマ皇帝のイタリア支配に
ロンバルディア同盟で対抗し、
ルネサンス文化が花開いたイタリア内でも
諸国家が覇権を争い、フランスやハプスブルク家も加わり、
戦闘や駆け引きが繰り返されていた。
傭兵隊長だったフランチェスコ・スフォルツァが
ヴィスコンティに代わってミラノ公国を支配し、
ルドヴィコ・スフォルツァは、
レオナルド・ダ・ヴィンチやブラマンテなど
多くの学者や芸術家を長年庇護した。
ミラノのS・M・グラツィエ聖堂にある
ダ・ヴィンチの最後の晩餐や
堅牢な城門や城塞など、
芸術分野に限らず、
砲撃に備えた要塞や都市計画など
多方面で才能を発揮した。
ここはその後の戦争でも破壊されることなく、
馬と人が共存した中世の街並みと共に
ドゥカーレ広場が、ルネサンスの面影を今に伝えている。
ロマネスク建築で生み出されたロンバルディア帯は
その名のごとくこの地方発祥のデザインだ。
広場を囲む建物の軒高を3面揃え、外壁のデザイン、
ポルティコのアーチ、窓の形まで徹底した統一感、
その連続性とリズムは室内空間のようだ。
広場の縦軸とは
ズレて配置しているにも関わらず、
バロック時代に広場側を
広場の中心軸に合わせて、
しかも凹面の曲線状に囲んで、
まるで野外劇場の舞台を思わせる
魅力的な正面性を形成している。
このバロックの外壁は、
シンメトリーに4つの扉があって、
その中の一つが街路になっている。
建物の外壁が広場に形を与え、
曲線状に囲まれた広場と云えば、
ローマのサン・ピエトロ広場や
スタジアムの観客席の曲線のまま凹面の外壁で囲まれた
ナヴォーナ広場が思い出されるけれど、
廻りの建物の高さに対する広場の幅が
親密感、スケールの気持ちよさを生む。
低く赤い煉瓦屋根には、
塔のミニチュアのような様々な煙突が見える。
広場の地面には、室内の床に施された幾何学模様さながらに
玉石と花崗岩で敷かれた模様が、
この広場にアクセスする5か所の道へ繋がる
人の流れを作り出し、動的な要素を醸し出す。
時代の潮流、刻一刻と移りゆく情勢の中で
生み出された珠玉の場所。
人々の価値観の変容の中で、風化させることなく
守り抜いた誇り高き人々。
奇跡の星、地球に生かされているヒトの一瞬の輝きのように
永遠に変わらないためには、変わり続けなければならないのだ。
司建築工房
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