2020年07月15日

casa effe のレスタウロ 3

雨続きの日々、今朝
久々の陽射しに身体が喜んだ気がする。

蝉たちも梅雨明けが待ちきれないようだ。

casa effe の現場では、
仕上げ工程、養生はがし、掃除と
1か月間切れ目なく没頭した。

毎回必ず初めてやる面白さを味わうけれど、
半年前に思考して想像した通りのモノが今、
職人の技術によって形になった。

tucasa_casa effe_6737_R.JPGただ床の装飾だけは、
基本の考えと材料寸法を基に

即興演奏のごとく、
その場でラインを決定して、
職人と共に生成された。

ここでも大工工事と同様、
間竿と基準線となる墨出しが肝となる。

僕はチェロを弾くんだけれど、
音程は、ある音から次の音への距離を
自分の身体に染み込ませることによって作られる。

tucasa_casa effe_3451s_R.JPG1ミリズレるだけで、
真の響きは生まれない。

音程がピタッと合った時、
楽器全体が共鳴する。

この時、元の音の音程が正確であることが前提だ。

これは捨て切りから始める大工仕事でも
床の装飾でも同じだった。

この1ミリをどう考えるかによって音楽が決まるように、
1ミリを合わせようとする執念は、建築も同じだ。

ピタッと合った時、建築は共鳴する。

tucasa_casa effe_3468s_R.JPG今回の casa effe は、
弦楽器のF字孔のことである。

共鳴した音が
このF字孔から解き放たれる。

先人達が最終的に
effe の形にしたことは興味深い。

僕の仕事は、手間は掛かっても
出来た時の感動があるし、材料のチョイスも参考になる。
そう職人が云ってくれた。

すべてを壊して作れば費用も掛かる。
元の部分を残しながら新たなデザインに取り込めないか。

tucasa_casa effe_3481s_R.JPG既存の巾木と方立、鴨居のライン、
既存の長押と新たな幕板のラインを
デザインに取り入れた。

お施主さんの好きな色をベースに、僕の中では、
シ・ミ・ラにb(フラット)が付いた音色にした。

後で、俵屋宗達の
風神雷神図屏風の色遣いだとふと気づく。

今は、お施主さんの琴線に触れることを願って。。。



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2020年06月02日

casa effe のレスタウロ 2

毎日大工さんとのモノ作りの充実感で、
現場に行くのが楽しみになっている。

tucasa_casa effe_5245_R.JPG僕がいることで、原寸墨と間竿作りは
図面寸法の読み違えがないし、

木を重ねる作り物の木出し寸法や
見せる木肌面の決定と組み方、

接着の判断等詳細に亘って
大工さんが悩むことがない。

土台の水平をピン真っ直ぐに作ることが、
その後の仕事の良し悪しを決める肝となる。

一分程度の壁の不陸を読み取り、
壁との取合部分は最終の削りシロを見込んで、
あくまでも矩に作ってゆく。

tucasa_casa effe_5453_R.JPG墨を追っていくと多少の伸びが出る。
その微妙な誤差を
指矩や自由金で写すのだけれど、

一辺は真っ直ぐであることが前提だ。

材料の細部の接合には導突きとノミを駆使して合わせ、
墨と照らし合わせながら、五厘以下の取合部分を
経験と勘で削りつけピタッと合わせてゆく。

落語にケチリンという毛一厘を縮めた言葉があるけれど、
納得いかないと次に進めない。
よしっと決めるのは自分のプライドだ。

tucasa_casa effe_5480_R.JPG面同士の目違いは、カンナを引いて一つにする。

カンナで引いた木肌は、
プレーナーの超仕上げとは
比較にならない艶が出る。

それは外の景色が映り込むほどだ。

組み上がって壁に吸い付けたとき、
矩を一つ一つ合わせてゆく丹念な積み重ねの末に
生まれた新たな形から、精神性が胸を打ってきた。

tucasa_casa effe_5515_R.JPG誤魔化さず逃げず、気を遣って、
作ってきたことを傍で見てきたからだろうか。

横板の手前と奥のラインがピタッと重なる。
まるでカンナの刃口と刃先の
わずかな出を見るかのようだった。

大工さんはその手仕事の成果を眺めて、
どこにも苦になるところがないと
満足気な表情を浮かべていた。

経糸と緯糸をコツコツ編んでいる時は気が付かないけれど、
離れてそれを眺めると素敵な着物が織りあがっていたかのように。

一つ一つの家具たちは木の命を頂いて、
僕ら作り手のこだわりが加わって、
新たな一生が始まるのだ。

tucasa_casa effe_5691_R.JPG修行して身に着けた日本の大工技術に、
僕は畏敬の念を覚えてきた。
特にカンナの調整には頭が下がる。

刃の研ぎ、台、刃口、裏座の調整、
すべてが揃わないと
あの薄削りの艶は現れないのだ。

刃自体も辛くないと
いくら研いでも切れ味は良くならない。

カンナは刃の状態がそのまま木に写るから
手が抜けないと言う。

今のご時世、SNSで
植物や花の投稿に心を惹かれる自分がいる。

その生命力、造形の妙を日頃肌で感じ、
想像力が湧き上がり、本質に近づいてゆく。

tucasa_casa effe_5809_R.JPGすべてを惜しみなく、納得のいく
いいモノを作りたいという心意気が
大工さんに伝わる。

今こそ前向きなエネルギーを
提供すること。それが
建築の本質的な役割ではないか。

永六輔は、カンナ屑なんて云っては勿体ない、
削り花だと。

大工さんが削った寸六の削り花を持って帰ろうかな
と言ったら、恥ずかしいと取り上げられた。

どこまでも謙虚な人なのでした。

つづく。


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2020年05月20日

casa effe のレスタウロ 1

季節は立夏も過ぎ、陽気が天地に満ちる小満だ。

日々の愛犬との散歩がてら、
花の移り変わりと鳥の声に癒されながら、
草木の生育の早さを実感する。

5月20日はWorld Bee Dayでもある。

桜と菜の花が咲き始めた頃から
ミツバチも活動を始め、

ミツバチは世界の食料の9割を占める100種類の作物種の
7割の受粉に役立っていると云われる。

僕ら人間はミツバチなどの花粉媒介者のおかげで
食料を得ているのだけれど、

経済活動や開発による気候変動によって、
2007年頃から世界中のミツバチが激減しているのだ。

今世の中は新型コロナウィルスの感染拡大で、
経済活動の停滞を余儀なくされているけれど、

移動の制限が、温室効果ガスや大気汚染物質の排出量を減少させ、
化石燃料の使用削減になり、自浄作用のように
地球を一時休めているように思える。

こうでもしないと、人類はかけがえのない地球を失いかねない。

自粛という自宅で過ごす日常の中で、
何が本当に大切なものなのか、
生き方を再確認するチャンスでもある。

さて、以前のお施主様から中古住宅購入を検討している
同僚の相談に乗ってほしいとお声を掛けて頂いたのが昨年の10月。

tucasa_casa effe_4485_R.JPG鉄筋コンクリート造2階建で、
外壁にクラックがなく、

外部のメンテナンスと内部に手を入れれば、
資産としては一定の価値があると思われた。

中古住宅はしばらく放置されていて、
掃除から始めた。

床も窓ガラスも雑巾が真っ黒になり、
掃除を終えたところから
養生をするのだけれど、丸5日を要した。

tucasa_casa effe_4512_R.JPG解体工事を通じて、鉄筋コンクリート造は
想像以上に頑丈に造られていた。

新たな空間の電気配線は、
既存の配線経路を結線部分から読み解き、

エアコン電源等は分電盤まで
配線を通さねばならないのだけれど、

一つも露出することなく、納めることができた。

tucasa_casa effe_4612_R.JPG今大工さんと毎日現場で
楽しい時間を過ごしている。

カンナやノミの研ぎをはじめ
道具の数々を万全な準備を整えて
現場入りしてくれた。

tucasa_casa effe_4765_R.JPG僕の仕事は、下地や材料の詳細図や
原寸大のモックアップを製作して、
大工さんが迷う時間を減らすこと。

建築はすべて
一本の基準線から出来ている。

特に床の水平は大事で、不陸のあるレスタウロは、
レーザーで基準線を墨付けることが肝心だ。
左右のレーザーが墨付けにピッタリ合うこと。

鉛筆の幅だけでも違ってくる。

tucasa_casa effe_4806_R.JPG原寸図を描いて、間竿を作ると、
スケールのような読み間違えがない。

仕上げを想定した下地と
取付の段取りを考え、

モノを当てがって写し、加工し組立てていく。

モノに合った様々な道具を駆使し、
作業台、敷物も変わる。

tucasa_casa effe_4845_R.JPG部材同士をピタッと納めるこだわり。
カンナの一振りが多いだけで
微妙に空いてくる緊張感。

何度も部材をあてがい、
指先の感覚を研ぎ澄ます。

神は細部に宿るというけれど、
面取りでさえ気を遣って
作ってくれているのが有難い。

誠実な心意気は、中古住宅を全く別物に変え、
形作られたモノに宿った精神性を実感する毎日だ。

ディズレーリの言葉が心に響く。
誠実にまされる知恵なし。

つづく。


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2019年08月25日

渥美 noie 再訪

旧渥美町へ入るとミンミン蝉が聞こえてくる。

おおらかな海の景色と相まって、
海風の避暑地にでも来たかのような錯覚を覚える。

竣工以来何度か訪れているけれど、思いがけず
6年前の自身の熱意との対面は新鮮だった。

tucasa_atsumi noie_3207_R.JPG土と木と紙の素材感、
曲線と奥行の力動的な静謐さは、

日常の秩序を超えない
バッハの音楽のようで、

決して時間の中で風化することのない、
神話の原型のような普遍性があるようにさえ感じた。

今も変わらず綺麗に暮らして下さっているお施主様に
感謝の念が沸き起こる。

帰り道、三河湾に浮かぶ三角形のテトラポットに目が留まり、
デザインのインスピレーションをしばし展開させてみた。


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2019年08月24日

現場は生成と永遠の世界

現場が完成した今日、つくつく法師が鳴き出した。

今日吹いた爽やかな風は、仕上げ工程で駆け抜けた
猛暑の日々が遠い昔のようだ。

過ぎた現場での想い出は、ほろ苦さを伴いながら蘇る
青春を振り返るかのような懐かしさを覚える。

生というものも、一日の終わりに振り返る
懐かしさなのかもしれない。

tucasa_casa anima_3138_R.JPG今年の夏も現場でよく汗を流した。

シャツを色濃く染めて、仕事を誠実にこなす
職人さんたちの姿に頭が下がる。

掃除屋さんに至っては、二日間に亘って
元からの汚れまでも綺麗にして、
施主を喜ばせてくれた。

tucasa_casa anima_3150_R.JPG新しく生まれ変わった間取りも空間も
創作の過程の人為的な刻印を拭い去って、

既存の事物と昔から
共存してきたかのような自然に帰る。

建築の形態を変容させた彫刻的な立体感が、
動的でしなやかにカデンツァを奏で、

四声のフーガとなって昂まる
バロックのように思えた。

この立体的なデザインは、
仕上げ工程の職人達の心にも響いたのだけれど、

ヴァイオリンのレッスンに通うお子達をも、
今回の現場用のモックアップを見て、
興味を惹いて反応してくれたことを聞き、

子供の素直な感性にも響くものだと
新しい発見があった。

もっとも自分自身がお子達に負けないくらい感動したのだから。

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2019年07月13日

現場は不協和な集合体

季節の移り変わりは早いもので、
梅雨の切れ間に蝉が鳴き出す、暑中見舞いの季節だ。

家相を好転させるために水廻りをガラリと変える
大がかりな改築現場は、

いわゆる書院造りの武家の伝統を引き継いだ、
真壁の和風住宅のリノヴェーションで、

施主の壊さなくて済むところはできるだけそのままに、
使える建具は使ってほしいという、揺るぎない要望から始まった。

建築に限らず、今月東京で観たクリムトにしても
あらゆる近代芸術は、異文化に刺激されて着想を得て、
自身の美意識を表現しているけれど、

僕は、生きる糧としての祈りや呪文として描いた縄文人の
動的な躍動感に別次元のパワーを感じ、心惹かれてきた。

tucasa_casa anima_2789_R.JPG真壁の静かな立体感から進化させて、
新しく構築する大壁には、伝統への共鳴と

新しい異化を織り交ぜながら、
端部に陰影を生む彫刻的な壁を造り出して、

変調していく生のリズムを奏で、暮らしに
生の根源的なエネルギーを表現しようと試みている。

tucasa_casa anima_2810_R.JPG改築の仕事は、隠れた部分に
予想外の現実が現れるけれど、
今回もまさに幾つか予想を裏切られた。

それでも何とかしてしまう解体屋の
職人さん達には、造作を積み重ねる今でも、

あなた達のおかげと
感謝の気持ちが沸き起こってくる。

今回初めて仕事を頼んだ大工さんには、
3Dデザインをイメージしてもらうための
施工図とモックアップを作成した。

tucasa_casa anima_2896_R.JPG建築というのは、常識が違う人間同士の気遣いと
連携を図ることで生み出される。

今世界は保護主義が台頭しているけれど、
自国のことのみに専念してはかえって、
自国の停滞を招く。

建築の現場でもどの世界でも同じで、
寛容の精神が良き結果をもたらすのだ。

かのアレクサンドロスは、捕虜でさえ下に見ることなく、
他民族の人権を尊重し、他宗教や異文化を侵さなかった。

tucasa_casa anima_2998_R.JPG多くの職人の手を借りて、
新たな生活空間が象られた現場は、

カルテット的な総合作用を持つ空間に
一歩一歩近づいている。

そう云えばクリムトの絵に、
ベートーヴェンが第九の合唱に採用した
シラーの言葉が書かれていた。

「あなたの行動と芸術を大勢が気に入らなくても、
少数の人が気に入ればいい。」

僕が好きなシラーの言葉、
「苦痛は短く、喜びは永遠である。」

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2019年01月20日

レディース鍼灸さいとう オープン

新たな時代の元年が明け、季節は大寒。

最も雑菌の少ないこの時期に
文化財の修復に使う古糊の寒糊炊きを行うという。

tucasa_ladiesshinkyu_2163_R.JPG昨年1月の構想から丸一年、
院長先生と手作りで改造してきた
鍼灸院がオープンした。

人の手の温もりを感じる、
院長先生はじめスタッフの方々の成果がここにある。

古代ローマの遺跡とは言わないまでも
絵画のように後世まで残ってほしいと
勝手な思いが芽生えてくる。

世間は益々手間を減らして、
同時に楽しみも減らしてしまっているけれど、

人は労力を注ぐほど、それを愛して大切にするものだ。
一貫した言葉と文法で練り上げたアイデアさえも愛着がある。

tucasa_ladiesshinkyu_3051_R.JPG身体を整え、癒される場所としての
鍼灸院に必要な環境は、
人の動きに馴染む造形と素材の感触。

訪れる子供たちに
本物の感受性が養われるような雰囲気を
作ってあげたい。

自分の中に湧き起こった感動の芽を
開花させるのが建築だけれど、

アイデアが火山のように燃焼してくる、
そのエネルギーの質に人は感動するのかもしれない。

誠実に従えば、必ず誠実への報いが建築に現れる。

建築は人格そのものだから、一生の修行でもある。
長く続けることを日々学び続けていきたいと思う。

tucasa_ladiesshinkyu_3071_R.JPG生まれたばかりの鍼灸院は、
これから多くの人々に愛され育まれ、
生成していく生命力を湛えていってほしい。

オープンの前日、スタッフの方々の準備の中、
写真撮影に伺った。

ベットとカーテンが設えられ、
鍼灸院としての原理が備わっていた。

あたかもヴェネチアの街をゴンドラの水上から眺めて、
詩情溢れる新たな風景を発見したかのように。

ホームページに掲載した画像とともに
お施主様に感謝を込めて。


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2018年12月31日

レディース鍼灸院のレスタウロ 3

tucasa_gou_2093_R.JPGあっという間に冬至を駆け抜け、
平成最後の大晦日は、
煤払いで新たな年を迎える準備だ。

朱漆の掛花入れに、庭で調達した花々や
わずかに残ったハナミズキの紅葉を活けて
冬の季節感を楽しんできた。

tucasa_gou_1926_R.JPGさて現場では、
ほぼ一年前の自分の思考が
実際の形となって姿を現した。

土間に描いた幾何学模様に石を象り、
赤土で彩色した床の質感がいい。

古来から朱は、朱漆や毛氈など、
生命力と魔除けの効果があると信じられてきた。

19世紀終わりから
印象派という市民芸術が生まれて以来、

職能的な技巧を破壊して、
新しい色彩理論や造形理念の抽象画が築かれた。

tucasa_gou_2037_R.JPG子供は本能的に感動を
記憶のままに描き出すけれど、

誰もが制作できる遊戯的な要素があり、
大人の僕もしばしイメージの世界に遊んで、

現れた4種類の木を刳り貫いた幾何学模様は、
深い魂の風景かも知れない。

これまでの人生の中で、
限られた機会に出会えた国内外の美しいものが、
深く自分の魂に突き刺さっている。

tucasa_gou_1931_R.JPGそれは、画像で残したものではなく、
ましてや永遠に所有できるわけもない美しいもの。

所有を断念することによって、
所有の意味を知り、
不滅の所有に向かう。

袋小路と云われた日本文化も
ようやく異文化の刺激を受け、

tucasa_gou_1949_R.JPG海外とも文化の交換が行われて、
近代文化の世界共通性は、
地球全体に及んでいる。

線と色彩による幾何学の構成美は、
今や国境を越えた世界共通語だ。

これからも立体感のある
命の籠ったものを作っていきたい。

1月14日のオープンまで鍼灸院として
患者様をお迎えする準備に余念がない。

平成が思い出となる来たるべき年が
皆様にとって良き年になりますように。


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2018年11月24日

レディース鍼灸院のレスタウロ 2

季節は小雪。

今年の2月から週に二日、院長先生と現場で自作奮闘して、
共に季節を共有してきた。

tucasa_gou_1836_R.JPG僕のアイデアを受け止めて、
すぐに形にしようと挑む姿勢に頭が下がる。

その過程にこそ
建築の醍醐味があるのだけれど、

たぶん国内では例のないものを生み出そうとしている自負がある。

鍼灸の神髄は、自然界の法則と同じ身体の調和だろう。

鍼灸院は健康になるべく訪れる場所で、
加えて不妊治療など女性や小児を専門とした鍼灸院だから
デザインにはそうした自然界のダイナミズムが表現されている。

tucasa_gou_1838_R.JPGこれまで欧米を旅してきて、どんな天才であろうと
他者や異文化からの影響を
何らかの形で受けていることを確信した。

先人たちのデザインに潜む知力の高さ、
マクロの視点とミクロに至る建築への情熱は、
以前のブログで書いた。

今年の夏には縄文展があって、
穏やかな均衡ではない、

視線の移動につれて、リズミカルに割り付けられながらも
奔放に躍動する不協和のバランス感覚に僕は心を動かされた。

tucasa_gou_1831_R.JPG幾何学的な調和とは違い、安定のない狩猟民族の
飢えと歓喜が共存する動的な空間感覚。

獲物や自然の恵みへの感謝や畏敬の心性は、
我々にも受け継がれているけれど、

生き抜くための造形には、
超自然的な意思や呪術的な意味があって、

ピカソやブラックが心を動かされて虜になった、
アフリカンアートにも共通した美意識がある。

古代ギリシャ以来のシンメトリーやリアリズムではなく、
ましてや見る人を意識した芸術の次元でもない、
生存の厳粛な営み、生きる糧としての凄まじい精神性に感じ入った。

tucasa_gou_1817_R.JPGこうして日進月歩、独自の視点と
自身の文化の理解が深まり、
デザインが導き出されてゆく。

現場では食品衛生法にも適合した
安全な原料の自然塗料で壁も天井も塗ったから、

塗りたてでも嫌な臭いがいっさいない。
何より、塗る作業に不快感が全くない。

tucasa_gou_1832_R.JPG今日建具の吊り込みをした。

建具は建具屋さんに製作してもらったのだけれど、
このような建具は初めて作ったと感動してくれた。

世界に一つだけの建具。

これから粘土系の自然塗料で床に彩色する。
縄文人が漆と顔料でしたように。

エントランスの土間には幾何学紋様を描いた。

一つひとつの形を象って、石を切り出していけば、
自作の苦労の先に、きっと良き思い出と共に
訪れる患者さんの心を動かし得る、永遠の宝物になると確信している。


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2018年05月05日

レディース鍼灸院のレスタウロ 1

tucasa_casa_8269_R.JPG桜に続きハナミズキの花も終わり、
緑が際立って美しく感じられる立夏。

新たな鍼灸院づくりで、
施工の段取りと墨だしとともに、
工具を手にして

鍼灸院の院長先生と一緒に施工することを許され、
その楽しさを共有させてもらている。

大工道具や重機を揃えて、
何でも自分で手掛ける院長先生の姿勢に
狩猟時代の人間の輝きを垣間見る気がする。

tucasa_gou_ 197_R.JPG科学の進歩の恩恵と引換えに、様々な
しがらみに縛られている現代だからこそ、

好きなことに没頭するかけがえのない時間は
何ものにも代え難い。

既存のそば屋の内部を解体して、
既存の住設や電気配線の撤去、水道管の改変、

腐った土台の取り替えや不十分な断熱施工の補充から
床組み、壁起こし、天井下地と骨格が見えてきた。

自分が引いた設計図を現場で現寸法に描き写し、
施工していくと目の前に実在が姿を現す、、、
そんな密かな喜びを味わっている。

tucasa_gou_8208_R.JPGここは女性と子供のための鍼灸院だから、
やさしく癒される空間であるために
木をふんだんに使い、

長方形の既存空間に
三角形グリッドを導入することで

原始的な包容感を与え、
天井の高低差が空間の親密感を増す。

地続きのヨーロッパは、
歴史と地勢の異なる文化の共振が生まれ、
無数のバリエーションが存在するけれど、

ヘレニズムとヘブライズムとともに
ローマ文化を基盤としながら

多様な民族的起源が息づいた
ロマネスク文化の重層性に
魅力を感じてきた。

福岡県にある古墳時代の石室壁画に三角形の彩色文様があって、
直線と三角形を組み合わせた文様が、まさに今回のグリッドで、
この建築の室内の秩序となる。

異質なものの融合は、
日本が殆ど持つことができなかった感覚のように思われる。

tucasa_gou_8361_R.JPG今回初めての試みも二つ提案していて、
一つは、ビザンチン芸術の
円から始まる交点を結んで、

三角文様グリッドを導き、
そこから自由な幾何学模様を生み出した。

幾何学パネルを26枚刳り貫き加工して、
木の壁と一体になった
窓からの光の変容を生み出そうというもの。

その文様に子供たちが色んな想像力を働かせてくれることを
今から楽しみにしている。

三角形が根底のテーマとして流れ、
空間に様々な三角形がアクセントとして現れる。

手間は掛かるけれど、手間を積み重ねた先に
歓喜が訪れるはずだ。

tucasa_casa_8365_R.JPG追伸:GWは、自宅の木の簀子の組子
41本を全部新しいものに換えて、

木の風呂桶や木の風呂蓋も磨いて、
自然の風合いを損ねない撥水塗装を施した。

木の箸で確信を得て、
今度は簀子でも実験を兼ねて。


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2017年08月11日

夏のレスタウロ3

お盆前の現場より。

木部に自然の着色塗装をし、スイッチ・照明器具を取付け、
特注で製作した和紙2種類を張った。

tucasa 346_R.JPG浴槽部分の壁に張った陶板と
相性の良い壁にしたくて、

茶の湯で建水や花入などに砂張という
鉛と錫に少量の銀を入れた色を目指して、

楮の太い繊維を混ぜながら、
水墨画のにじみとぼかしや
濃淡の技法で製作した紙だ。

一日現場にいると、光の移ろいで
色や表情が多様に変化して、様々な色の光を投影する。

tucasa 359_R.JPGもうひとつは、水を張った容器に
墨を落として、細い竹で水面を動かして、

扇子で風を起こした模様の水面から、
和紙をそっと被せて写し取る。

フィレンツェのマーブル紙が有名だけど、
墨流しという日本古来の技法で、

川の水面に墨を落として、
流れによって生まれる模様の変容を楽しんだ
9世紀頃の宮廷遊びが起源だ。

今回は人にとって大切な五行の要素がすべて入っていて、
とりわけ水の表現がテーマのカギとなっている。

tucasa 382_R.JPG内部空間のコーナーに
邪気を祓うような
力強い自然石を張っている。

シダ植物の化石も混ざったギリシャの石は、
職人さんと一つひとつ洗った。

大中のポイントとなる景石のリズムは、
おおかた予定しておいて、
単調にならないようにひと手間ずつ積み上げていく。

tucasa 384_R.JPG機械の道具では切り口が
石の素材感を殺してしまうから使いたくない。

石の目を見て、石と対話し、
想いを巡らしながら

ノミと石頭(せっとう)、ビシャン、
刃トンボで叩く。

石の彫刻の歴史は3万年前の旧石器時代後期まで遡り、
古代エジプト、ギリシャには紀元前の傑作が数多く存在するけれど、

道具はその頃とほとんど変わっていない。

tucasa 397_R.JPG呼吸のように淡々と
内部空間にひとつの景色が
ゆっくり生み出されていく。。。

機械の音がしない、
石を叩く音だけが響く現場の

サウンドスケープは
そばにいて心地よい。


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2017年07月30日

夏のレスタウロ2

猛暑の現場での日々が続く。
お施主さんが差入れして下さるお気持ちが嬉しい。

床の養生貼りは僕の仕事なんだけど、
複雑な床形状をロール状の養生シートから象っていき、
すべての床を網羅した時には密かな充実感を味わう。

職人さんに最高のパーフォーマンスを発揮してもらうための
凛とした空気感が僕の現場の特徴だ。

その日に出た廃材は速やかに片付けて搬出し、
掃除をして明日の仕事場を作る。

そんな大工さんとの工程が完了した。

振り返ると、ここで使われた材料たちは、
僕が面取りをして送り出した。

作り手の想いが材料たちに伝わって、
誠実な職人さんの手で作られた建築に住む人は幸せだ。

tucasa 272_R.JPG一旦養生シートを撤去して、
僕の好きなマーモリウム張り。

巾2mの重たい材料を折らずに扱い、
広い部分から攻めて、

複雑な壁際をコンパスと空間認識力で
納めていく精度は、養生貼りの比ではない。

複雑な箇所は包装紙を型紙にして、
定規と罫書き道具を駆使して写し取り、
床材にカッターを入れていく。

その時、下の仕上がった床材にカッターの刃を
到達させずに切っていくのは熟練の技だ。

カットしたものを床にあて、
ピタッと合った瞬間は感動的ですらある。

仕上がったマームリウムを眺めるのも束の間、
二度目の養生シート貼りでさらに凛とした現場に
職人たちを迎える準備をする。

既に仕上げ材料の手配、特注和紙や
光壁の製作依頼等済ませてある。

tucasa 284_R.JPG建具屋さんとオリジナルで製作する
手掛や取手の材質・寸法も決めて、

打合せに寄った際、工房では
僕の現場のエアコンガラリを製作中だった。

ガス屋さんに一旦開栓してもらって、
ボイラー・追炊き・浴暖・床暖の試運転をして、
正常に作動することを確認した。

tucasa 290_R.JPG水道屋さんに硬い壁材への穴あけ、
リモコン・シャワーの取付、

左官屋さんに浴槽廻りのタイル張り、目地込み、
排水目皿の中の最終勾配を造形してもらった。

職人さんは僕と一緒に施工することを喜んでくれる。

tucasa 306_R.JPG
何より、タイル割・材料の配置・カット寸法・目地巾等
僕が決定するので迷いがない。

来週から塗装→壁の石張り→建具取付
→内装張り→電気仕上げ、と
お盆前までに現場は彩りを添えていく。

最近テレビで世界中のパラリンピックの
アスリートを眼にする。
彼らには生きることの輝きと可能性を見出せる魅力がある。

予算の制約の中で、可能性を追求する建築人生もまた
日々の生活に輝きを添える。



司建築工房

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posted by Koji at 19:49 | TrackBack(0) | 現場

2017年07月20日

夏のレスタウロ1

イタリアでは歴史的な建物を修復しながら、
現代のセンスを生かして、内部空間をデザインし直すことが
建築家にとって重要な仕事になっているけれど、

僕が今やっているプロジェクトも
既存の建築的な特徴を生かしながら

tucasa 159_R.JPGお施主さんの夢や理想、ニーズに合わせて
機能と共に再生していく、まさにレスタウロだ。

今回は初めて仕事をする西尾の大工さんと
猛暑の名古屋で魅力ある空間を造形してきた。

今回のデザインの特徴は、ブローバスとシャワーが
リビングという広場に面していて、
壁で囲わず連続する。

tucasa205_R.JPG床の排水勾配だけは
豊橋の左官屋さんに来てもらった。

防水屋さんは今回初めての業者さんに
頼んだのだけれど、

今までで一番丁寧な仕事をされる職人で
ラッキーだった。

いい職人に出会える事は宝だ。

tucasa 219_R.JPG浴槽との取合いは
水返しの形状を大工さんが作って、

それを一旦外して
防水屋さんが防水施工を施して、

乾いて再び浴槽の内側に
セットするという連携を取った。

その後、浴槽廻りの形状通り、防水層で一体にしていく。

防水屋さんが左官屋さんの仕事を
今まで見た中で一番上手いと言ってくれて嬉しかった。

左官屋さんに電話で伝えたら
「努力していたら、いい職人が来てくれるんですよ!」と云った。

tucasa 248_R.JPG自然の素材は、人間の感性や身体に語りかける
独特の存在感があるけれど、

浴槽空間の壁には1m×3mの
大型の陶板を切り出して張った。

水墨画のにじみ、ぼかしの技法は
味わいのある質感で、

目地のない壁1枚の陶板は
なかなか人の心に訴えかけるものがある。

tucasa 251_R.JPGしかも表面の光触媒の作用が
光と水の力で空気を浄化し、

セルフクリーニングの機能や
抗ウイルス・抗菌効果を発揮する。


先進的な意匠性と機能性は
さすが世界のデザインを牽引するイタリアだ。

梅雨が明けて本格的な猛暑の夏、
これから日本の伝統技法の素材と
抑制を利かせた日本の色彩で

お施主さんのために洗練された舞台作りに邁進します。


司建築工房

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2017年06月29日

リフォームはイタリアの広場

同じ愛知県民、将棋の藤井くんの活躍を嬉しく見守りつつ、

6月からマンションリフォームが始まった。
ほぼ毎日職人さんと現場で過ごしている。

完成のイメージを職人さんに直接現場でお伝えした方が
間違いがないし、僕が現場にいると、

配線の出し位置から実材料での組み方、原寸での納まり決定等、
職人さんが悩むことなく仕事に集中できる。

自分も現場を見て決定するのだから、迷いがない。

tucasa_ 054_R.JPG空間の改造は、壁を取り払うことで
すでに劇的に景色が変わった。

今回は最上階の角部屋で、
外周部と隣との界壁だけでなく、
天井部にも電磁波防止対策を施した。

それを覆う仕上げは何を選択するか。

tucasa_ 080_R.JPGリフォームなので、既存の下地の状況、
どういう方法で施工すると剥がれず(安全に)
綺麗に仕上がるか、

出来れば手間を掛け過ぎず(安価に)
行うかは毎回作戦検討で、
今回はラワンベニア。

きっちり際を合わせていく作業は手間が掛かるけれど、
さすが大工さんだ。

tucasa_ 099_R.JPG今回の現場を初めて下見した時、
イタリアの広場にしようと直感して、

天井の高低差で空間に深みを増し、
いくつかの立体造形を混在させて、

床、壁、天井、それぞれの素材と色で
調和を与えようと思っている。

建物の高さを揃え、
ヴァリエーションのあるファサードに統一性を与え、

柱廊などによって外部空間に連続性を与える
イタリアの広場。

リビングの中に浴槽とシャワーがある空間を
構築しているのだけれど、リビングを中心として、

キッチンと浴槽とベッドがそれぞれ、収納機能を持った
モニュメンタルなTVを囲む形になっている。

キッチンに立った景色、シャワー室に入る景色、
浴槽に浸かった景色、ベッドからの景色、
正面性と軸線が少なからず存在する。

tucasa_ 145_R.JPGさて、現場に浴槽を運び込んで設置し、配管をした。
今回はエレベーターに載せて搬入できるもので作る。

ここでも完成の床、壁のイメージ、設計寸法、
シャワーの位置出し等指示をする。

床の排水配管はいつも元の管底が決まっていて
余裕がないので水道屋さんの悩みどころ。

tucasa_ 143_R.JPG匂いが上がるのを避ける
排水トラップの取付けがいつも悩ましい。

すべての建築でそうだけど、
配管の不具合、
部品の不良などによる水漏れが

マンションではお施主さん並びに下階の方に
大変なご迷惑を蒙るので、

造成前に試運転と排水を繰り返し、念には念を入れる。
排水が逆流せずスムーズに流れるか、
実際排水の配管経路は一度やり直した。

ちなみに浴槽を囲むエプロン部分は和紙アクリルの光壁にして、
和紙アクリルを外せば内部照明の交換、
水道配管の点検ができるように計画している。

今日家具の詳細図を描いた。
材料手配、職人の段取り、現場の日々はまだまだ続く。


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2017年02月26日

坪庭のメンテナンス

先日友人の庭師と坪庭のメンテナンスに伺った。

独立当初から僕の庭や外構工事はすべて彼の手掛けたもので、
僕は彼の庭が好きだし、一緒に仕事していて楽しい。

西欧の回廊から眺める中庭や
石の舗装と石の外壁で囲まれた広場の景観に感動するけれど、

日本には京都の中庭をはじめ大徳寺孤蓬庵忘筌、
築地塀で囲まれた竜安寺の石庭など

日本の先人たちは、内にいながら外部の自然との連帯感、
内から外部を眺める景観を重要視してきた。

ここは華道家のための外部空間に花を飾るための庭だ。

tsuboniwa_R.JPG三角形で囲まれた空間で思い出すのは、
イタリアのサンジミニャーノに
井戸を囲んだ広場があるんだけど、

ここでは三角形の庭に
花を飾るための台となる石を置き、

統一した素材の壁で囲うのではなく、
竹と杉皮で陰陽を表現し立体感を

地面には起伏を造り曲線を描いて、
狭い空間に奥行と広がりを出している。

地苔が自生して、緑が人の心を和ませ憩いを与える。

先日の積雪で銀世界の庭が美しかったそうだ。
これから芽吹いて樹々が青々と茂り木陰を作って、

秋には葉っぱが色付いて、
四季折々の景色を楽しませてくれることだろう。

昨今の日本の外部空間は、化学建材やフェイク材料が氾濫して、
無神経な野点看板など自然の景観に異質なカオスを形成している。

美しい歴史的な街並みを形成しているところは、
それぞれの土地固有の自然素材と、気候風土に適した工法で造られ、
特有の色彩と味わいがあるものだ。

高温多湿の日本での自然素材は、
古美て朽ちていくのが自然で、移ろうものなのだ。

自分たちの大切な領域を愛着を持って手を掛け続ける作法と
精神哲学は失ってはならない。

建築や庭は技術を越えた文化の表現なのである。


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2016年12月16日

阿蘇現地視察

この度の熊本地震でお亡くなりになられた方々、
そのご遺族の皆様に対し謹んでお悔やみ申し上げますとともに
被災された皆様方に心よりお見舞い申し上げます。

今回被災されたお施主様の住宅再建のために
現地視察に訪れた。

解体は市の公費解体を利用して、
現在仮設住宅にお住まいだ。

洗濯機が外なのが不便だけど、
建替えの話ができることは希望だ。

1481872109.jpgまず肥後一の宮の阿蘇神社にご挨拶。

紀元前創建の歴史ある神社は、
重要文化財の桜門や拝殿の倒壊した姿は痛々しかった。


地元の方々は神社が犠牲になって自分たちをお守り下さったと。
身代わりになられた神様に心ばかりの奉賛をさせて頂き、
阿蘇の復興の象徴となる事を望む。

現在解体のための足場が架かり、
使える木材はすべて丁寧に解体され再興される。
ちなみに再建には10年20億かかるという。

さて、阿蘇市の大動脈国道57号線と
それに並行して走るJR豊肥線は土砂崩れで、

依然として復旧の目途が立っておらず、
遠回りの迂回路で渋滞が余儀なくされている。

1000回以上続いた余震がようやく落ち着いて
屋根等の修理依頼が殺到。

補助金が出るんだけど、期限が当初12月に切られて、
とてもこなせる数ではなく、来年3月まで延期になったけど、
それでも職人が足りず復旧は進まず、無期限になるのだとか。

こんな状況の中、県外から悪徳業者がやってきて、
半日の日当が3万5千だと言って、しかたなく頼んだら
大学生のアルバイトを連れてくる始末。

困っている人を食い物にする輩が多いのだとか。

1481872082.jpg僕は信頼のできる工務店の方を
紹介してもらえて、
お施主さんとの顔つなぎもできた。

お施主さんに車で案内して頂くと、
常に山の頂きが平らな山並みがぐるっと
街を取り囲んでいる風景がある。


1481872140.jpgこの外輪山が取り囲む
巨大な円形広場のような阿蘇の街は、
広大な阿蘇カルデラそのもので、

火山噴出物が大量に噴出して、
地下のマグマだまりに空洞ができ、
地面が陥没したクレーターらしい。

火砕流や溶岩の大地に水が溜まり、
湖だった時代もある聖地のような場所だ。

1481872056.jpgその昔、阿蘇の街を取り囲む
外輪山が裾野の巨大な山が噴火して、
噴出物が長崎や佐賀まで飛び散った。

つまり阿蘇の山の噴火で
九州ができたくらいの
巨大な山の噴火だったという。

阿蘇は多孔質な岩石の地質から
ミネラル豊富な伏流水に恵まれ、
1500以上もの湧泉が分布している。

お施主さんの敷地もこの伏流水の恩恵を受けており、
被災しても水には不自由しなかったそうだ。

僕が泊まった民宿も蛇口からはすべて阿蘇の天然水だった。
伏流水で育まれた産地の食材は美味でした。

これから阿蘇地方の復興の一助となるように
取り組んでいきたいと思う。

負けんばい、熊本!


司建築工房

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2016年12月06日

casa grotta HP UP

久しぶりに完成後写真撮影ができたので、
ホームページにアップしました。

これはシューズボックス型の3階建ての住居の内部を
全面改装したものだ。

1480928986.jpg白いビニールクロスと既製品のドアがついた
物件だったけれど、

洞窟状の空間は、
やりようによっては魅力的なものになる。

壁を取り去り、照明・LANのハブ構築、
電磁波対策をしながら、

1480928745.jpg床はすべてリノリウム。
1階の壁・天井は桐、2階はレッドシダー。
ストーブ廻りは煉瓦。

レッドシダーは家具もすべて材木から挽いてもらい、
大工さんと一緒にプレーナー掛け、面取りをして
愛着をかけた木たちだ。

この空間に山の精、山のスピリットを注ぎ、
樹の洞窟にしようというのが、そもそもの発想だった。

1480928891.jpgお施主さんの生活スタイルを
自らの文法で家具や内部造作を形にした。

この空間に薪ストーブを設置したんだけど、

古代より家は母親の子宮を象っていて、
家の中にはかまどがあった。

1480929027.jpg
ローマ時代、洞窟は大地を母と敬う信仰から生まれ、
洞窟を母の胎内、命の源と見立てた。

ルネサンス時代、人々はキリスト教以前の時代は
おおらかで豊かだったのではないかと
古代の理想を探し始める。

ローマ時代のネロ皇帝の住居跡を掘ってみたら、
グロテスクの語源となった
グロッタ模様の世界が広がっていた。

1480928460.jpgルネサンスで人間解放が謳われてから
王侯貴族は競って、
古代の理想グロッタを作った。

ロシアのピョートル大帝も早速流行を取り入れ、
宮殿に自分の息抜きのための
秘密の場所を作らせた。

ペテルゴフのゴロッタはほぼ完全な形で残っている。

1480928502.jpg19世紀までは建築を作る時、
人は自然信仰の力を借りた。

自然を肯定し、人間も自然の一部であるという
グロッタの精神で作り上げた内部空間は
僕の仕事の魂だ。

大地と繋がり、原始的な力を持つ素材たちが、
人の心を揺り動かす建築。

1480929745.jpgこの安らぎに満ちた
静謐なハーモニー、

自然と建築と人間が
融合した暮らしの中で

新しい喜びを
日々発見していくことを願って。

敬白。

司建築工房

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2016年11月18日

現場は時間と空間を超える

紅く染まった山々を車窓から楽しみ、現場へ着くと

僕の愛する建築が美しい石積みを纏って、
大地の上で出迎えてくれた。

1479471510.jpgすっかりこの場所に
馴染んでいるように見える。

鳥たちが自分たちのために
世界が時間と空間を
用意しておいてくれたことへの

喜びと感謝を歌うように、

僕はこの感動の時空を胸に刻み、
地霊に感謝と引き続きの祝福をお願いした。

この石はある山で採れた貴重な石で、
今では採掘が禁止になっていて、
文字通り最後の石なのだそうだ。

1479471547.jpg貴重な石はこの建築がある限り
語り継がれることだろう。

そして石積み職人は有名な腕利きで、
ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、
世界中から呼ばれるとのこと。

彼の仕事は一日に一坪しか進まない。

場面場面で素敵な遊び心とリズムを取りながら
その場所に相応しい形の石を見付け出し、

時に加工し、形造っていった仕事の跡は
見る者を釘づけにする。

写真に収めたい衝動に駆られた僕の脚の上で
橙や黒のてんとう虫たちが、
羽根を広げたりしてずっと踊っている。

1479471577.jpg茶色がかったグレーの石。
窓廻りの造形イメージ。

素材の質と色でこの建築のクオリティが決まる。。。
色々お伝えしたけれど、

監督がこの職人を人の紹介を通じて
引っ張ってきてくれたことは、
思いがけない幸運な出来事だった。

シモサカサン、このデザインの発想は
精霊が降りてきたのか、と監督が聞いてきた。

それはどうかわからないけど、
この土地に立った時、
四角いグリッドじゃないって直感したことは確かだ。

1479471631.jpg建築はどうしても自然にはない
直線になるのだけれど、

幾何学で自然に少しでも
寄り添いたいと想っている。

この図面を見た時、今まで見たことのない
面白そうな建築だと思ったけど、

いざ施工してみると大変で逃げたくなった、
と笑いながら語る監督の表情は
前回よりも緩んでいる。

監督は続けた。
この建築が完成したらたぶん
シモサカサンと同じ気持ちを味わえると思う。

まだまだ内装、建具、設備、家具と来年まで現場は続く。

1479471681.jpg図面を読み切れていない部分を
再度説明したり、
ひとつだけ手直しもお願いした。

浴室の壁、浴槽廻り、床のスノコも図面通り
クレームを恐れず木でやってほしいこと。

ストーブの煙突の施工、キッチンの屋根排気、
トップライトの通気ガラリ、建具と硝子、
マーモリウムの施工、家具の共通納まり。。。

色々お伝えして、完成は楽しみだけど、
早く終わってしまうと淋しくなる、
そんな現場をあとにしたのでした。


司建築工房

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2016年11月15日

竣工の火入れ式

現場は養生シートを撤去し掃除をして、
カーテンを取り付けた。

レースのカーテンは、
電磁波シールドカーテンになっている。

現在製作中の椅子等納品が残ったけれど、
お施主さまは、遊び心のある家具や全体の調和と
色遣いを大変気に入って下さった。

1479129432.jpg街の木々が色づきはじめた秋の日、
無事竣工を迎え、
薪ストーブの火入れ式を行った。

お施主さまに記念すべき点火をして頂いて、
火のある生活の幕開けだ。

暖炉屋さんも絶賛の
床強度と壁の防火構造、

そして断熱材の入った二重煙突で
施工した薪ストーブは、

木もガスも煙もちゃんと燃えている
素直な炎を見せてくれた。

優しく暖めてくれる熱を身体に感じて、
揺らめく炎を眺めていると話が弾む。

1479129348.jpg人類は新石器時代に家の中に炉を作った。

これこそ失われつつある民家に続いた
人が住む家の本質だ。

自然と人間の文化が合わさる場所で
美しい炎を熾す美学。

人間のキリなき欲望と歴史や自然を無視して
効率のみを追求する、資本主義経済の行き詰まりと同様に

ここまでやるかという便利な家電や
空調さえあればいいという発想の家では、

人としての生活の温かみや心の豊かさを育む
本来の家の本質からかけ離れてしまっている。

1479129396.jpg太陽エネルギーによって育まれた
木と人が

大地の上で
本性のままに融合する。

この哲学を
これからも形にしていきたいと想う。


司建築工房

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2016年11月04日

現場は最終章へ

常任指揮者の僕としては最後のフィナーレに向かって
これまで積み上げてきた集中力で
職人合奏を指揮している。

毎朝現場までの車中は、ヴィヴァルディの四季♪

今年のクリスマスにチェロで参加することもあるんだけど、
テンションが上がる。

1478266373.jpg現場は薪ストーブと煙突を設置して、
スイッチ、コンセント、ライトを取り付けて、
現場に照明が灯った。

大工さんが残りのテーブル2つとソファ台、
ベットの組立て、階段の手摺、タオル掛け、
全て壁や家具と同じ木で製作した。

1478266442.jpg
建具屋さんが引出の取付け、
エアコンガラリ、建具の吊り込み。

それに塗装屋さんがオイルフィニッシュ塗り。

掃除屋さんにガラス窓を中心に
掃除してもらって、

ガラス面にあらかじめカットしておいた
電磁波防止フィルムを貼ってもらった。

最近は、銀行通帳やカードの磁気が
壊れるケースが急増していて、

携帯電話をはじめ空気中の電磁波放射量が
格段に増えているのが原因という話を
行員の方から聞いた。

外国人観光客の拡大に向けた街の無料公衆WIFI化や
交通網など街に出たら電磁波に晒される世の中で、

避難場所としての住宅を考えなくてはならなくなった。

1478266506.jpg今週は胡桃割り人形の第2幕のようで、
職人が帰った後、毎日掃除と
翌日の現場の準備で、

先週末から今週もずっと
現場に張り付いている。

実は僕も一奏者でもあり、ワーロンシートを
カットして、曲げ加工を施し、貼り込んだ。

1478266411.jpg最上階のテラスから大都会を眺める以外は、
閉じた建物なんだけど、

壁を隔てた内部は街にはない大地から繋がる
自然の息吹を感じて、外の喧騒を忘れる。

お施主さんの好きな山のエネルギー、
山の空気を感じてもらえる空間。

職人さんが、頭の中でどう考えたら
こんな建築になるのかって聞いてくれた。

確かに頭の中で考えたことが現実になるんだけれど、

「建築家は建物を使う人、
そこに住む人の気持ちを汲み取ることに尽きる」

急に冬が到来したような一週間っだたけれど、
家に帰ると暖炉に火が揺らめいていた。


司建築工房

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