2017年10月02日

チョイ住み in Rome 3

景観規制は、建物だけでなく、看板、広告物、店舗デザインにまで及ぶ。
建物の外観を維持するだけでなく、むしろ標識や広告物に
調和を与えるデザイン手法が、ローマの都市景観を形成している。

ジェントリフィケーションが起き、
歴史的市街地にはかなりの高額所得者しか住んでない
格差社会も垣間見えたりしますが、

tucasa_rome_ 142_R.JPG先人たちが築いた玄武岩の石畳にしても、
現在の市民の方々の街の美観を
保存したいという尊い意思によって、

我々はかけがえのない文化遺産を
享受させてもらえるのだ。

またコロッセオはローマの貴重な遺産であるという市民の声が高まり、
19年間に渡って大規模な修復工事が行われたんだけど、
その費用は民間の銀行が負担している。

tucasa_rome_ 3119_R.JPGその他数々の文化遺産や美術品の修復費用は、
実は民間企業の寄付金で賄われている。

利益の半分は地元に戻すという企業倫理が、
イタリア文化の奥深さかもしれない。

ある夜の歩き疲れて、たまたま入った
壁がワインで埋め尽くされた
クチーナはいい思い出だ。

店長含め3人の男性給仕は、
ゴッドファーザーの世界を彷彿とさせる出で立ちで、

常連客や東欧の富豪風グループ、
旦那がスパイかもしれない風ロシア人家族の中、

プロフェッショナルな身のこなしは
まるでオペラの舞台のようだった。

僕らの野菜が食べたいという要望に
炒め物、蒸し物の野菜を松の板に載せて出してくれて、

お薦めのトスカーナのTボーンステーキを頬張ったら
旨い!目がランランとエネルギーが湧いてきた。

tucasa_rome_ 3414_R.JPG店長からのおごりですというアマーロは、
これ絶対マフィアしか手に入らない、

市場には出廻らない酒だろうと
想像してしまうくらい美味しかった。

ティラミスも絶品で
カプチーノには心温まるメッセージ。

ミケランジェロやベルニーニ、カラヴァッジョなどの
芸術作品も感動的でしたが、
話題は尽きないのでまたの機会に。


司建築工房

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チョイ住み in Rome 2

イタリアは世界遺産の宝庫、その70%はローマにあるという。

古いものを壊さず、残しさえすれば、
それが観光資源となり、文化価値となり、経済価値になることに
イタリアの自治都市国家の人々は早くから気づいた。

tucasa_rome_ 188_R.JPG保存修復の起源はルネサンスだけれど、
ミケランジェロがディオクレティアヌス帝の
浴場跡の大浴場部分を

S・M・デッリ・アンジェリ教会に
レスタウロした例などで古代ローマを
大切にした息吹が感じられます。

ルネサンスはメディチ家をパトロンとしてフィレンツェで展開されたが、
後期は教皇をパトロンとしてローマで展開された。

ローマの街は、古代ローマからロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック
と目にする景色は飽きることがなく、

今回歴史的市街地にチョイ住みして、
深夜や早朝までよく歩きました。

tucasa_rome_ 155_R.JPG毎朝カンポ・デ・フィオーリ広場の朝市で
果物、野菜、生ハムを買って、

バターをはじめ乳製品も新鮮で美味しく、
しかも安い。

中世の街並みは、道がまっすぐではなく幅も色々で、
ふと色んな形の広場に出て、

街中に噴水がたくさんあって、
古代ローマの遺跡が目の前に現れる!

ローマは元々沼地で、水は確保できたんだけど、
人口の増加と市民に良質な水を供給するために
何十キロも先から11本の水道を引っ張った。

そのうちの1本ヴィルゴ水道がアックア・ヴェルジネ水道として
引き継ぎ、紀元前からの水を今だに供給している。

街路にふと現れる水飲み場からは、カルキの入っていない良質な水が、
24時間、365日噴出し続けている。

ローマ帝国時代に築いた水道橋はフランスやスペイン、
トルコなどに及び、ヨーロッパの主要都市や街道も
紀元前のローマ人が築いたものが基礎になっている。

現代に受け継がれる悠久の歴史を感じる街歩きは格別です。

tucasa_rome_ 3303_R.JPG様々な広場や噴水は市民の憩いの場となり、
ボルゲーゼ公園などの広大な緑地もあり、

街中に心地よい居場所が
たくさん作ってある。


建物の外壁は限られた素材で統一感があって、
何より標識や看板の素材や材質まで建物と調和しているのだ。

つづく。


司建築工房

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2017年10月01日

チョイ住み in Rome 1

イタリア人には、夕方になると散歩に出て、
自分の街歩きを楽しみ、知り合いとの会話に花を咲かせる、
そんな日常の中に楽しみを見つける人生観がある。

そして人生を楽しむ単位は、まず夫婦、家族。
次に友達、近所や街の住人だ。

だからこそ自分たちの暮らす街を大切にし、
魅力ある街の暮らしをみんなで守ろうとする。

それは自分の家だけ魅力的にしても実現しないという
自治都市共同体の精神、コムーネを重んずる。

tucasa_rome_ 035_R.JPGそんなイタリアのまちづくりという視点で
現地を訪れたいと思い続けてきましたが、
ようやくその機会に恵まれました。

火山の噴火で埋もれた
ローマ時代の都市ポンペイの発掘により

紀元前の街に市役所や劇場、
2万人収容の円形闘技場などが見つかり、
道路は石で舗装され、
各住居には水道が引かれていた。

tucasa_rome_ 3156_R.JPG古代ローマ人の生活を快適にする叡智と
インフラ建設を可能にする高度な技術。

パンテオンやコロッセオのように
コンピューターや重機のない時代に、

現代でさえ困難な大規模建造物が
2000年前のまま建っている現実を
目の当たりにすると

過去の先人たちへの尊敬の念が自ずと湧き上がります。

tucasa_rome_ 099_R.JPGまたパンテオンやアッピア街道など、
有力者が私財を投じて建設された例も
少なくない。

この大規模建造物を可能にした秘訣は
ローマンコンクリートだ。

コンクリートを多用した文明はローマしかない。

パンテオンの基礎構造や壁の厚みの計算、
高さによって材質を使い分けたり、

ドームは厚みや建築的工夫によって
円形の天窓を実現していることなど

古代ローマの人知、学問の高さ、
高度な技術は驚くべきことです。

tucasa_rome_ 058_R.JPG僕はこのパンテオンが一番好きなんだけど、
建物自体が巨大な日時計になっていて、

4月7日頃と9月2日頃の年2回、
太陽の神アポロンと天空の神ユピテル

を祀る壁龕のアーチに
天窓からの円形の光が重なるのだ。

天文学や暦を自在に操る建築。

古代ローマ時代にヴィトルヴィウスによって書かれた「建築書」に
建築家は、幾何学に精通し、音楽を理解し、
星学あるいは天空理論の知識を持つこと、とある。

「ローマを知るには一生では足りない」

つづく。

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2017年09月10日

villa campo HP UP

5年毎に更新する建設業の許可申請と
建築士事務所の許可申請の提出を終え、

8月に竣工したvilla campo の撮影画像を
ホームページにアップしました。

ご高覧下されば幸いに存じます。

tucasa_villa campo_7122_R.JPG以前に僕が手掛けた建築で、
ベットルーム〜シャワー室〜パウダールーム
が連続する空間を気に入って下さって、

部屋に浴槽がある空間をつくることで始まった。

初めて現場を見たとき、
イタリアの広場にしようと思ったことは
以前のブログで書いた。

イタリアと云っても様々な街や自治都市があり、
魅力的な広場は数多くあるけれど、

玄関を入ってすぐ右に折れ、
構造の梁の関係で天井がかなり低い部分をくぐると
そこから3つの部屋に分岐している。

不足していた収納スペースを
広場の鐘楼に見立てて増設することで、

メインの空間へはまた右へ曲がるという
地中海的迷宮性を帯びたヴェネツィアの空間構成を思った。

狭くて薄暗い道からトンネルをくぐって、
明るい広場に出る感覚だ。

美しい外壁やリズミカルな回廊で囲われた広場は、
まるで大広間、はたまた演劇的舞台のよう。

いろんな方向から広場を眺め、
また広場の真ん中から周りを眺める。

ヴェネツィアがオリエントと西欧の文化が溶け合って、
独特の都市風景を作っているように、

ここでは日本の伝統技法の素材や文化と融合させて、
魅力ある広場を作りたいと思った。

地中海世界には古代から、
多くの建物がぎっしり並ぶ喧騒からは想像もできない、
緑と水のある静寂の中庭を作ってきた。

ヴェネツィアでは地域住民の生活と密接に結びついた広場をカンポと呼ぶ。
イタリア語では田畑や野原を意味しているらしい。

周辺の環境と対話して、人の感性に響く素敵な風景で囲まれ、
美しい舗装を施せば、人々に親しまれる広場ができるのだ。

今回のレスタウロの機会を与えて下さった
クライアントに感謝致します。


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2017年08月11日

夏のレスタウロ3

お盆前の現場より。

木部に自然の着色塗装をし、スイッチ・照明器具を取付け、
特注で製作した和紙2種類を張りました。

tucasa 346_R.JPG浴槽部分の壁に張った陶板と
相性の良い壁にしたくて、

茶の湯で建水や花入などに砂張という
鉛と錫に少量の銀を入れた色を目指して、

楮の太い繊維を混ぜながら、
水墨画のにじみとぼかしや
濃淡の技法で製作した紙です。

一日現場にいると、光の移ろいで
色や表情が多様に変化し、
様々な色の光を投影します。

tucasa 359_R.JPGもうひとつは、水を張った容器に墨を落とし、
細い竹で水面を動かし、

扇子で風を起こした模様の水面から、
和紙をそっと被せて写し取ります。

フィレンツェのマーブル紙が有名ですが、
墨流しという日本古来の技法で、

川の水面に墨を落として、
流れによって生まれる模様の変容を楽しんだ
9世紀頃の宮廷遊びが起源です。

今回は人にとって大切な五行の要素がすべて入っており、
とりわけ水の表現がテーマのカギとなっています。

tucasa 382_R.JPGそして今、内部空間のコーナーに
邪気を祓うような
力強い自然石を張っています。

シダ植物の化石も混ざったギリシャの石は
職人さんと一つひとつ洗いました。

大中のポイントとなる景石のリズムは
おおかた予定しておいて、
単調にならないようにひと手間ずつ積み上げていく。

tucasa 384_R.JPG機械の道具では切り口が
石の素材感を殺してしまうから使いたくない。

石の目を見、石と対話し、想いを巡らしながら
ノミと石頭(せっとう)、ビシャン、
刃トンボで叩く。

石の彫刻の歴史は3万年前の旧石器時代後期まで遡り、
古代エジプト、ギリシャには紀元前の傑作が数多く存在するけれど、

道具はその頃とほとんど変わっていない。

tucasa 397_R.JPG呼吸のように淡々と
内部空間にひとつの景色が
ゆっくり生み出されていく。。。

機械の音がしない、
石を叩く音だけが響く現場の

サウンドスケープは
そばにいて心地よい。


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2017年07月30日

夏のレスタウロ2

猛暑の現場での日々が続きます。
お施主さんが差入れして下さるお気持ちが嬉しい。

床の養生貼りは僕の仕事なんだけど、
複雑な床形状をロール状の養生シートから象っていき、
すべての床を網羅した時には密かな充実感を味わう。

職人さんに最高のパーフォーマンスを発揮してもらうための
凛とした空気感が僕の現場の特徴だ。

その日に出た廃材は速やかに片付けて搬出し、
掃除をして明日の仕事場を作る。

そんな大工さんとの工程が完了しました。

振り返ると、ここで使われた材料たちは、
僕が面取りをして送り出した。

作り手の想いが材料たちに伝わり、
誠実な職人さんの手で作られた建築に住む人は幸せです。

tucasa 272_R.JPG一旦養生シートを撤去して、
僕の好きなマーモリウム張り。

巾2mの重たい材料を折らずに扱い、
広い部分から攻めて、

複雑な壁際をコンパスと空間認識力で
納めていく精度は、養生貼りの比ではない。

複雑な箇所は包装紙を型紙にして、
定規と罫書き道具を駆使して写し取り、
床材にカッターを入れていく。

その時、下の仕上がった床材にカッターの刃を
到達させずに切っていくのは熟練の技だ。

カットしたものを床にあて、
ピタッと合った瞬間は感動的ですらある。

仕上がったマームリウムを眺めるのも束の間、
二度目の養生シート貼りでさらに凛とした現場に
職人たちを迎える準備をする。

既に仕上げ材料の手配、特注和紙や
光壁の製作依頼等済ませてある。

tucasa 284_R.JPG建具屋さんとオリジナルで製作する
手掛や取手の材質・寸法も決め、

打合せに寄った際、工房では
僕の現場のエアコンガラリを製作中でした。

ガス屋さんに一旦開栓してもらい、
ボイラー・追炊き・浴暖・床暖の試運転をし、
正常に作動することを確認した。

tucasa 290_R.JPG水道屋さんに硬い壁材への穴あけ、
リモコン・シャワーの取付、

左官屋さんに浴槽廻りのタイル張り、目地込み、
排水目皿の中の最終勾配を造形してもらった。

職人さんは僕と一緒に施工することを喜んでくれる。

tucasa 306_R.JPG
何より、タイル割・材料の配置・カット寸法・目地巾等
僕が決定するので迷いがない。

来週から塗装→壁の石張り→建具取付
→内装張り→電気仕上げ、と
お盆前までに現場は彩りを添えていく。

最近テレビで世界中のパラリンピックの
アスリートを眼にする。
彼らには生きることの輝きと可能性を見出せる魅力がある。

予算の制約の中で、可能性を追求する建築人生もまた
日々の生活に輝きを添える。



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2017年07月20日

夏のレスタウロ

イタリアでは歴史的な建物を修復しながら、
現代のセンスを生かして、内部空間をデザインし直すことが
建築家にとって重要な仕事になっているけれど、

僕が今やっているプロジェクトも
既存の建築的な特徴を生かしながら

tucasa 159_R.JPGお施主さんの夢や理想、ニーズに合わせて
機能と共に再生していく、まさにレスタウロだ。

今回は初めて仕事をする西尾の大工さんと
猛暑の名古屋で魅力ある空間を造形してきた。

今回のデザインの特徴は、ブローバスとシャワーが
リビングという広場に面していて、
壁で囲わず連続する。

tucasa205_R.JPG床の排水勾配だけは
豊橋の左官屋さんに来てもらった。

防水屋さんは今回初めての業者さんに
頼んだのだけれど、

今までで一番丁寧な仕事をされる職人で
ラッキーでした。

いい職人に出会える事は宝です。

tucasa 219_R.JPG浴槽との取合いは
水返しの形状を大工さんが作り、

それを一旦外して
防水屋さんが防水施工を施し、
乾いて再び浴槽の内側に
セットするという連携を取った。

その後、浴槽廻りの形状通り、防水層で一体にしていく。

防水屋さんが左官屋さんの仕事を
今まで見た中で一番上手いと言ってくれて嬉しかった。

左官屋さんに電話で伝えたら
「努力していたらいい職人が来てくれるんですよ!」と云った。

tucasa 248_R.JPGさて、自然の素材は人間の感性や身体に語りかける
独特の存在感があるけれど、

浴槽空間の壁には1m×3mの
大型の陶板を切り出して張った。

水墨画のにじみ、ぼかしの技法は
味わいのある質感で、

目地のない壁1枚の陶板は
なかなか人の心に訴えかけるものがある。

tucasa 251_R.JPGしかも表面の光触媒の作用が
光と水の力で空気を浄化し、

セルフクリーニングの機能や
抗ウイルス・抗菌効果を発揮する。


先進的な意匠性と機能性は
さすが世界のデザインを牽引するイタリアだ。

梅雨が明けて本格的な猛暑の夏、
これから日本の伝統技法の素材と
抑制を利かせた日本の色彩で

お施主さんのために洗練された舞台作りに邁進します。


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2017年07月15日

大相撲名古屋場所2017

子供の頃から、夕刻の日本の茶の間の原風景とも云える
大相撲をテレビで目にしてきたけれど、

先日お誘いを受けて、
初めて大相撲名古屋場所へ足を運んで、

表舞台を陰で支える裏方の方々の振る舞いを含め、
日本の伝統文化の息吹を堪能して参りました。

受付では益荒雄親方がお出迎え。

当日券が朝の6時半に完売と伝えられて、
連日横綱の土俵入りの後、満員御礼の垂れ幕が下がる。

tucasa 059_R.JPG一通り会場を散策して、
座席の単管足場の組み方や

向正面の力士の花道、
土俵も色んな方向から眺めてみる。


呼出しの独特の節回し、行司の衣装や所作、
力士は力水を口に含み、土俵に塩を撒く。

呼出しの方々が土俵造りも担当されるそうで、
場所ごとに土も変わる。

tucasa 053_R.JPGこの高さが最も怪我をしないんだという、
60pの高さの土俵の壁のひび割れが
良き景色になっていた。

取組を土俵下で待つ力士の座布団は、
格によって様変わりするが、

付け人から座布団を受け取って、
前の力士の座布団と交換するのも呼出しの役目だ。

tucasa 052_R.JPG僕らは、幕下の前から
会場入りしたのだけれど、

力士の廻しは絹ではなくおそらく木綿で、
擦り切れている力士もみえました。

廻しは洗わず干すだけだと聞いた。

十両になると、化粧廻しをして土俵入りもあり、
廻しはカラフルになる。

tucasa 072_R.JPG行司も階級があり、幕下以下は
膝下を出した裸足で、木綿の装束だが、

十両になると白い足袋を履いて、
夏は麻の装束に身を包む。

三役になると草履を履いて、印籠を携える。
そして最高位の立行司のみ短刀を携え、これは
軍配の差し違えの際は切腹の覚悟を示すものだそうだ。

華やかな装束は室町時代の武士の装束に由来するという。

観覧席は正面の素晴らしいお席で、
力士たちが声を掛けたくなるほど間近だった。

tucasa 133_R.JPGこの日は奇しくも僕の席の目線の先、
向正面には将棋の藤井くんが観戦していた。

まさに土俵を挟んで藤井くんと差しだった。

会場を出ると、テレビで観戦していた母が
テレビに写ってたよ〜とメールをくれた。

着物と帯と草履で夏の装いを身に纏って出掛けたハレの日は、
放送終了間際に映し出された映像と共に
良き思い出となりました。

tucasa_ryoufuutchakai_0715_R.jpg独立して12周年に
涼風茶会を催してから5年が経つ。

この5年で色んな経験をして、世界が拡がった。
17周年に感謝。



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2017年06月29日

リフォームはイタリアの広場

同じ愛知県民、将棋の藤井くんの活躍を嬉しく見守りつつ、

6月からマンションリフォームが始まりました。
ほぼ毎日職人さんと現場で過ごしております。

完成のイメージを職人さんに直接現場でお伝えした方が
間違いがないし、僕が現場にいると、

配線の出し位置から実材料での組み方、原寸での納まり決定等、
職人さんが悩むことなく仕事に集中できる。

自分も現場を見て決定するのだから、迷いがない。

tucasa_ 054_R.JPG空間の改造は、壁を取り払うことで
すでに劇的に景色が変わった。

今回は最上階の角部屋で、
外周部と隣との界壁だけでなく、
天井部にも電磁波防止対策を施した。

それを覆う仕上げは何を選択するか。

tucasa_ 080_R.JPGリフォームなので、既存の下地の状況、
どういう方法で施工すると剥がれず(安全に)
綺麗に仕上がるか、

出来れば手間を掛け過ぎず(安価に)
行うかは毎回作戦検討ですが、
今回はラワンベニア。

きっちり際を合わせていく作業は手間が掛かるけれど、
さすが大工さんです。

tucasa_ 099_R.JPG今回の現場を初めて下見した時、
イタリアの広場にしようと直感して、

天井の高低差で空間に深みを増し、
いくつかの立体造形を混在させて、

床、壁、天井、それぞれの素材と色で
調和を与えようと思っている。

建物の高さを揃え、
ヴァリエーションのあるファサードに統一性を与え、

柱廊などによって外部空間に連続性を与える
イタリアの広場。

リビングの中に浴槽とシャワーがある空間を
構築しているのだけれど、リビングを中心として、

キッチンと浴槽とベッドがそれぞれ、収納機能を持った
モニュメンタルなTVを囲む形になっている。

キッチンに立った景色、シャワー室に入る景色、
浴槽に浸かった景色、ベッドからの景色、
正面性と軸線が少なからず存在する。

tucasa_ 145_R.JPGさて、現場に浴槽を運び込んで設置し、配管をした。
今回はエレベーターに載せて搬入できるもので作る。

ここでも完成の床、壁のイメージ、設計寸法、
シャワーの位置出し等指示をする。

床の排水配管はいつも元の管底が決まっていて
余裕がないので水道屋さんの悩みどころ。

tucasa_ 143_R.JPG臭いが上がるのを避ける
排水トラップの取付けがいつも悩ましい。

すべての建築でそうですが、
配管の不具合、
部品の不良などによる水漏れが

マンションではお施主さん並びに下階の方に
大変なご迷惑を蒙るので、

造成前に試運転と排水を繰り返し、念には念を入れる。
排水が逆流せずスムーズに流れるか、
実際排水の配管経路をやり直した。

ちなみに浴槽を囲むエプロン部分は和紙アクリルの光壁にして、
和紙アクリルを外せば内部照明の交換、
水道配管の点検ができるように計画している。

今日家具の詳細図を描いた。
材料手配、職人の段取り、現場の日々はまだまだ続く。


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2017年05月23日

villa grid HP UP

tucasa_villa grid_ 153.JPG2000年に独立して17年。
多くの方のお陰様で、

海外での有意義なプロジェクトを
終えることができました。


ホームページWORKSに公開しましたので、
興味がございましたらご高覧下さい。

振り返ると、人生は偶然の重なりで、
若き日の人々との出会いがなければ、

今回のエキサイティングな経験はできなかっただろうと、ふと想う。
今まで関わって下さった方々の顔が浮かぶ。

日本では花々が淡々と咲き、新緑の季節を迎えたかと思いきや
もう夏の暖気がお出ましだ。

時の過ぎ行く早さに何の文句もないけれど、
文化財の消失と街並みの破壊のテンポは速すぎる。

戦後、産業の高度成長による開発事業によって
20世紀後半に多くの文化財が姿を消した。

例えばライトの帝国ホテルは1967年、
ライト未亡人が取り壊し反対の講演をホテル内で行ったその日、
未亡人の目の前で作業員を入れて石の解体作業が始まった。

戦禍を免れ、文化都市だった京都までもが
半世紀の間に多くの木造家屋が取り壊され、
90年代だけで、4万棟以上の古い木造家屋が消えた。

古いもの、自然なものは汚くて面倒で危険だと壊し、
ピカピカの工業製品を近代的で綺麗だと、
精気のない化学建材で作ることを選んだ人々が大多数を占めた。

全国どこに行っても看板と電線がひしめき合い、
公共施設はどこも土地の文化を取り入れず、画一的なフェイクばかり。

それでも繊細な感性を持つ人々は自分の好きな場所を見つけ、
観たい景色だけに焦点を絞って、残された自然や文化財を慈しむ。

日本には素材に対する美意識と世界に誇れる技術がある。

例えば昨年震災にあった熊本城の
あの安山岩の石組みは見事というしかない。
穴太衆(あのうしゅう)の眠り目地と武者返しの空間認識能力。

現代人ではできない技術や手に入らない材は保存し、
被害を受けても元の状態に近づくように修復に努め、
文化を守ることは残された国民の義務だと思う。

振り返れば、僕は若い頃から民家が好きで、
木や石や藁、土、紙、漆の温かい素材の生み出す
美しさ、テクスチャーに胸を躍らせた。

本物の素材で職人と誠心誠意ものづくりをしたいと思い、
90年代、数々の大先輩たちから勉強させて頂いた。

人生の先達たちの言葉には貴重な体験を経てしか
語りえない知恵が詰まっていた。

今でもその言葉は僕の胸の中で生き続け、指針になっている。

伝統と新しい施工技術を融合したら、快適で安全な建築が造れる。

tucasa_villa grid_ 034.JPG今回の建築は素材選びが
重要な要素だった。
それも現地で調達できる素材で。

木材は大陸の大地に相応しく
落ち着いた色味と
程良い野性味がほしかったので、

窓、ドア、テーブル、
机、棚はチェリーにした。

赤味のある木肌で華やかさがあり、
適度な硬さと重さで、温かみのあるスベスベした手触り。

壁と天井は柔らかい赤味のあるレッドシダー。
新築した時よりも5年10年経って落ち着いて
美しさが増すことだろう。

tucasa_villa grid_ 263.JPGここは冬の寒さが厳しいので、
開口部はすべて二重で

外壁廻りの内側は
藁入りの黄土と炭(断熱)で
これだけで厚みが300mmある。

外壁はすべて地元で採掘された石を積み、
下地を入ると厚みが250mmあるから、
外周部の壁の厚みは550mmを超える。

床下にも炭と黄土で厚みが300mmあり、
小砂利の蓄熱層と温水パイプの床暖房システムになっている。

もちろん冬は暖炉で火のある暮らしだ。

空調の室外機も温水ボイラーも
建築の外部のどこにも見えないように
デザインの一体化を図っている。

これからも施主の良き人生の一部になれたら
どんなに幸せだろう。

そのために今、勉強したいことがたくさんあって、
好奇心が加速する。


司建築工房

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