緑が際立って美しく感じられる立夏。
新たな鍼灸院づくりで、
施工の段取りと墨だしとともに、
工具を手にして
鍼灸院の院長先生と一緒に施工することを許され、
その楽しさを共有させてもらている。
大工道具や重機を揃えて、
何でも自分で手掛ける院長先生の姿勢に
狩猟時代の人間の輝きを垣間見る気がする。
しがらみに縛られている現代だからこそ、
好きなことに没頭するかけがえのない時間は
何ものにも代え難い。
既存のそば屋の内部を解体して、
既存の住設や電気配線の撤去、水道管の改変、
腐った土台の取り替えや不十分な断熱施工の補充から
床組み、壁起こし、天井下地と骨格が見えてきた。
自分が引いた設計図を現場で現寸法に描き写し、
施工していくと目の前に実在が姿を現す、、、
そんな密かな喜びを味わっている。
やさしく癒される空間であるために
木をふんだんに使い、
長方形の既存空間に
三角形グリッドを導入することで
原始的な包容感を与え、
天井の高低差が空間の親密感を増す。
地続きのヨーロッパは、
歴史と地勢の異なる文化の共振が生まれ、
無数のバリエーションが存在するけれど、
ヘレニズムとヘブライズムとともに
ローマ文化を基盤としながら
多様な民族的起源が息づいた
ロマネスク文化の重層性に
魅力を感じてきた。
福岡県にある古墳時代の石室壁画に三角形の彩色文様があって、
直線と三角形を組み合わせた文様が、まさに今回のグリッドで、
この建築の室内の秩序となる。
異質なものの融合は、
日本が殆ど持つことができなかった感覚のように思われる。
一つは、ビザンチン芸術の
円から始まる交点を結んで、
三角文様グリッドを導き、
そこから自由な幾何学模様を生み出した。
幾何学パネルを26枚刳り貫き加工して、
木の壁と一体になった
窓からの光の変容を生み出そうというもの。
その文様に子供たちが色んな想像力を働かせてくれることを
今から楽しみにしている。
三角形が根底のテーマとして流れ、
空間に様々な三角形がアクセントとして現れる。
手間は掛かるけれど、手間を積み重ねた先に
歓喜が訪れるはずだ。
41本を全部新しいものに換えて、
木の風呂桶や木の風呂蓋も磨いて、
自然の風合いを損ねない撥水塗装を施した。
木の箸で確信を得て、
今度は簀子でも実験を兼ねて。
司建築工房
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