2017年09月27日

チョイ住み in Rome 1

イタリア人は、個人の部屋以外は家の中も街の中も
さほど大差ない空間領域として生活しているようだ。

だからこそ自分たちの暮らす街を大切にし、
魅力ある街の暮らしをみんなで守ろうとする。

それは自分の家だけ魅力的にしても実現しないという
自治都市共同体を重んずる精神だ。

そんなイタリアのまちづくりという視点で
今回現地を訪れる機会に恵まれた。

紀元前の共和制時代の遺構は見られないけれど、
ヴェスピオ火山の噴火で埋もれた
ローマ時代の都市ポンペイの発掘によって

紀元前の街に市役所や大劇場、
2万人収容の円形闘技場などが見つかり、
道路は石で舗装され、各住居には水道が引かれていた。

日本の弥生時代に、ほぼ現代社会が出来ていたのだ。

ガラス容器の起源はメソポタミア文明だけど、
型枠のいらない吹き技法が、紀元前1世紀にシリアで開発されて、
ローマの属州に取り込まれたことで、窓ガラスが登場する。

tucasa_rome_ 3156_R.JPG古代ローマ人の生活を快適にする叡智と
インフラ建設を可能にする高度な技術。

パンテオンやコロッセオのように
コンピューターや重機のない時代に、

現代でさえ困難な大規模建造物が
1900年前のまま建っている現実を
目の当たりにすると

過去の先人たちへの尊敬の念が自ずと湧き上がる。

切石の集積で大きな開口部を作れるアーチを編み出し、
アーチを立体的にしたヴォールト天井は、
既にコロッセオで見られる。

楕円形の外壁面は、アーチが3層積み重なり、
アーチの間にギリシャのオーダーに従って
ピラスターで壁面装飾していて美しい。

悠久の時を廃墟となって風雪に耐え、
採石場となって建材に転用され、戦場となっても
圧倒的な存在感を放つ巨大な建築だ。

古代ローマ人は、やはりメソポタミア文明に始まり
ローマにもたらされた煉瓦や
砕石と火山灰のローマンコンクリートを使って強度を出した。

tucasa_rome_ 099_R.JPGローマには、パンテオンやアッピア街道など、
有力者が私財を投じて建設された例も
少なくない。

パンテオンの基礎構造や壁の厚みの計算、
一番厚い部分で約6.2mあるけれど、

材料を工夫して使い分け、下層のトラバーチンから
クーポラの上層は骨材を軽石に変えて薄くしてある。

クーポラを支えるドラムの壁の厚みは約7mあり、
5層の格天井の建築的工夫によって
円形の天窓を実現していることなど

古代ローマの人知、学問の高さ、
高度な技術には舌を巻く。

ハドリアヌス帝には、シリア出身の石工や
東方の属州から来た建築集団が付いていて、
構造力学や立体幾何学に明るい彼らがすべて形にした。

ハドリアヌス帝は現代の建築家に近いかもしれない。

tucasa_rome_ 058_R.JPG僕はこのパンテオンが一番好きなんだけど、
建物自体が巨大な日時計になっていて、

4月7日頃と9月2日頃の年2回、
太陽の神アポロンと天空の神ユピテル

を祀る壁龕(へきがん)のアーチに
天窓からの円形の光が重なる。

天文学や暦を自在に操る建築。

帝政時代が始まった紀元前27年に
カエサルの養子アウグストゥス帝に献呈した
ウィトルウィウスによって書かれた「建築書」に

建築家は、幾何学に精通し、音楽を理解し、
星学あるいは天空理論の知識を持つこと、とある。

そういえば、カエサルが計画して
アウグストゥスが完成したマルケルス劇場は、

二千年を経た現在も何家族かが暮らす建築物として
今も使われていて、毎日横を通って眺めていた。

「ローマを知るには一生では足りない」

つづく。

司建築工房

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2017年09月10日

villa campo HP UP

5年毎に更新する建設業の許可申請と
建築士事務所の許可申請の提出を終えて、

8月に竣工したvilla campo の撮影画像を
ホームページにアップしました。

ご高覧下されば幸いに存じます。

tucasa_villa campo_7122_R.JPG以前に僕が手掛けた建築で、
ベットルーム〜シャワー室〜パウダールーム
が連続する空間を気に入って下さって、

部屋に浴槽がある空間をつくることで始まった。

初めて現場を見たとき、
イタリアの広場にしようと思ったことは
以前のブログで書いた。

イタリアと云っても様々な街や自治都市があって、
魅力的な広場は数多くあるけれど、

玄関を入ってすぐ右に折れ、
構造の梁の関係で天井がかなり低い部分をくぐると
そこから3つの部屋に分岐している。

不足していた収納スペースを
広場の鐘楼に見立てて増設することで、

メインの空間へはまた右へ曲がるという
地中海的迷宮性を帯びたヴェネツィアの空間構成を思った。

狭くて薄暗い道からトンネルをくぐって、
明るい広場に出る感覚だ。

美しい外壁やリズミカルな回廊で囲われた広場は、
まるで大広間、はたまた演劇的舞台のよう。

いろんな方向から広場を眺めて、
また広場の真ん中から周りを眺める。

ヴェネツィアがオリエントと西欧の文化が溶け合って、
独特の都市風景を作っているように、

ここでは日本の伝統技法の素材や文化と融合させて、
魅力ある広場を作りたいと思った。

地中海世界には古代から、
多くの建物がぎっしり並ぶ喧騒からは想像もできない、
緑と水のある静寂の中庭を作ってきた。

ヴェネツィアでは地域住民の生活と密接に結びついた広場をカンポと呼ぶ。
イタリア語では田畑や野原を意味しているらしい。

周辺の環境と対話して、人の感性に響く素敵な風景で囲まれ、
美しい舗装を施せば、人々に親しまれる広場ができるのだ。

今回のレスタウロの機会を与えて下さった
クライアントに感謝致します。


司建築工房

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2017年08月11日

夏のレスタウロ3

お盆前の現場より。

木部に自然の着色塗装をし、スイッチ・照明器具を取付け、
特注で製作した和紙2種類を張った。

tucasa 346_R.JPG浴槽部分の壁に張った陶板と
相性の良い壁にしたくて、

茶の湯で建水や花入などに砂張という
鉛と錫に少量の銀を入れた色を目指して、

楮の太い繊維を混ぜながら、
水墨画のにじみとぼかしや
濃淡の技法で製作した紙だ。

一日現場にいると、光の移ろいで
色や表情が多様に変化して、様々な色の光を投影する。

tucasa 359_R.JPGもうひとつは、水を張った容器に
墨を落として、細い竹で水面を動かして、

扇子で風を起こした模様の水面から、
和紙をそっと被せて写し取る。

フィレンツェのマーブル紙が有名だけど、
墨流しという日本古来の技法で、

川の水面に墨を落として、
流れによって生まれる模様の変容を楽しんだ
9世紀頃の宮廷遊びが起源だ。

今回は人にとって大切な五行の要素がすべて入っていて、
とりわけ水の表現がテーマのカギとなっている。

tucasa 382_R.JPG内部空間のコーナーに
邪気を祓うような
力強い自然石を張っている。

シダ植物の化石も混ざったギリシャの石は、
職人さんと一つひとつ洗った。

大中のポイントとなる景石のリズムは、
おおかた予定しておいて、
単調にならないようにひと手間ずつ積み上げていく。

tucasa 384_R.JPG機械の道具では切り口が
石の素材感を殺してしまうから使いたくない。

石の目を見て、石と対話し、
想いを巡らしながら

ノミと石頭(せっとう)、ビシャン、
刃トンボで叩く。

石の彫刻の歴史は3万年前の旧石器時代後期まで遡り、
古代エジプト、ギリシャには紀元前の傑作が数多く存在するけれど、

道具はその頃とほとんど変わっていない。

tucasa 397_R.JPG呼吸のように淡々と
内部空間にひとつの景色が
ゆっくり生み出されていく。。。

機械の音がしない、
石を叩く音だけが響く現場の

サウンドスケープは
そばにいて心地よい。


司建築工房

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2017年07月30日

夏のレスタウロ2

猛暑の現場での日々が続く。
お施主さんが差入れして下さるお気持ちが嬉しい。

床の養生貼りは僕の仕事なんだけど、
複雑な床形状をロール状の養生シートから象っていき、
すべての床を網羅した時には密かな充実感を味わう。

職人さんに最高のパーフォーマンスを発揮してもらうための
凛とした空気感が僕の現場の特徴だ。

その日に出た廃材は速やかに片付けて搬出し、
掃除をして明日の仕事場を作る。

そんな大工さんとの工程が完了した。

振り返ると、ここで使われた材料たちは、
僕が面取りをして送り出した。

作り手の想いが材料たちに伝わって、
誠実な職人さんの手で作られた建築に住む人は幸せだ。

tucasa 272_R.JPG一旦養生シートを撤去して、
僕の好きなマーモリウム張り。

巾2mの重たい材料を折らずに扱い、
広い部分から攻めて、

複雑な壁際をコンパスと空間認識力で
納めていく精度は、養生貼りの比ではない。

複雑な箇所は包装紙を型紙にして、
定規と罫書き道具を駆使して写し取り、
床材にカッターを入れていく。

その時、下の仕上がった床材にカッターの刃を
到達させずに切っていくのは熟練の技だ。

カットしたものを床にあて、
ピタッと合った瞬間は感動的ですらある。

仕上がったマームリウムを眺めるのも束の間、
二度目の養生シート貼りでさらに凛とした現場に
職人たちを迎える準備をする。

既に仕上げ材料の手配、特注和紙や
光壁の製作依頼等済ませてある。

tucasa 284_R.JPG建具屋さんとオリジナルで製作する
手掛や取手の材質・寸法も決めて、

打合せに寄った際、工房では
僕の現場のエアコンガラリを製作中だった。

ガス屋さんに一旦開栓してもらって、
ボイラー・追炊き・浴暖・床暖の試運転をして、
正常に作動することを確認した。

tucasa 290_R.JPG水道屋さんに硬い壁材への穴あけ、
リモコン・シャワーの取付、

左官屋さんに浴槽廻りのタイル張り、目地込み、
排水目皿の中の最終勾配を造形してもらった。

職人さんは僕と一緒に施工することを喜んでくれる。

tucasa 306_R.JPG
何より、タイル割・材料の配置・カット寸法・目地巾等
僕が決定するので迷いがない。

来週から塗装→壁の石張り→建具取付
→内装張り→電気仕上げ、と
お盆前までに現場は彩りを添えていく。

最近テレビで世界中のパラリンピックの
アスリートを眼にする。
彼らには生きることの輝きと可能性を見出せる魅力がある。

予算の制約の中で、可能性を追求する建築人生もまた
日々の生活に輝きを添える。



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2017年07月20日

夏のレスタウロ1

イタリアでは歴史的な建物を修復しながら、
現代のセンスを生かして、内部空間をデザインし直すことが
建築家にとって重要な仕事になっているけれど、

僕が今やっているプロジェクトも
既存の建築的な特徴を生かしながら

tucasa 159_R.JPGお施主さんの夢や理想、ニーズに合わせて
機能と共に再生していく、まさにレスタウロだ。

今回は初めて仕事をする西尾の大工さんと
猛暑の名古屋で魅力ある空間を造形してきた。

今回のデザインの特徴は、ブローバスとシャワーが
リビングという広場に面していて、
壁で囲わず連続する。

tucasa205_R.JPG床の排水勾配だけは
豊橋の左官屋さんに来てもらった。

防水屋さんは今回初めての業者さんに
頼んだのだけれど、

今までで一番丁寧な仕事をされる職人で
ラッキーだった。

いい職人に出会える事は宝だ。

tucasa 219_R.JPG浴槽との取合いは
水返しの形状を大工さんが作って、

それを一旦外して
防水屋さんが防水施工を施して、

乾いて再び浴槽の内側に
セットするという連携を取った。

その後、浴槽廻りの形状通り、防水層で一体にしていく。

防水屋さんが左官屋さんの仕事を
今まで見た中で一番上手いと言ってくれて嬉しかった。

左官屋さんに電話で伝えたら
「努力していたら、いい職人が来てくれるんですよ!」と云った。

tucasa 248_R.JPG自然の素材は、人間の感性や身体に語りかける
独特の存在感があるけれど、

浴槽空間の壁には1m×3mの
大型の陶板を切り出して張った。

水墨画のにじみ、ぼかしの技法は
味わいのある質感で、

目地のない壁1枚の陶板は
なかなか人の心に訴えかけるものがある。

tucasa 251_R.JPGしかも表面の光触媒の作用が
光と水の力で空気を浄化し、

セルフクリーニングの機能や
抗ウイルス・抗菌効果を発揮する。


先進的な意匠性と機能性は
さすが世界のデザインを牽引するイタリアだ。

梅雨が明けて本格的な猛暑の夏、
これから日本の伝統技法の素材と
抑制を利かせた日本の色彩で

お施主さんのために洗練された舞台作りに邁進します。


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2017年07月15日

大相撲名古屋場所2017

子供の頃から、夕刻の日本の茶の間の原風景とも云える
大相撲をテレビで目にしてきたけれど、

先日お誘いを受けて、
初めて大相撲名古屋場所へ足を運んで、

表舞台を陰で支える裏方の方々の振る舞いを含め、
日本の伝統文化の息吹を堪能してきた。

受付では益荒雄親方がお出迎え。

当日券が朝の6時半に完売と伝えられて、
連日横綱の土俵入りの後、満員御礼の垂れ幕が下がる。

tucasa 059_R.JPG一通り会場を散策して、
座席の単管足場の組み方や

向正面の力士の花道、
土俵も色んな方向から眺めてみる。


呼出しの独特の節回し、行司の衣装や所作、
力士は力水を口に含み、土俵に塩を撒く。

呼出しの方々が土俵造りも担当されるそうで、
場所ごとに土も変わる。

tucasa 053_R.JPGこの高さが最も怪我をしないんだという、
60pの高さの土俵の壁のひび割れが
良き景色になっていた。

取組を土俵下で待つ力士の座布団は、
格によって様変わりする。

付け人から座布団を受け取って、
前の力士の座布団と交換するのも呼出しの役目だ。

tucasa 052_R.JPG僕らは、幕下の前から
会場入りしたのだけれど、

力士の廻しは絹ではなくおそらく木綿で、
擦り切れている力士もみえた。

廻しは洗わず干すだけだと聞いた。

十両になると、化粧廻しをして土俵入りもあり、
廻しはカラフルになる。

tucasa 072_R.JPG行司も階級があり、幕下以下は
膝下を出した裸足で、木綿の装束だけれど、

十両になると白い足袋を履いて、
夏は麻の装束に身を包む。

三役になると草履を履いて、印籠を携える。
そして最高位の立行司のみ短刀を携え、これは
軍配の差し違えの際は切腹の覚悟を示すものだそうだ。

華やかな装束は室町時代の武士の装束に由来するという。

観覧席は正面の素晴らしいお席で、
力士たちが声を掛けたくなるほど間近だった。

tucasa 133_R.JPGこの日は奇しくも僕の席の目線の先、
向正面には将棋の藤井くんが観戦していた。

まさに土俵を挟んで藤井くんと差しだ。

会場を出ると、テレビで観戦していた母が
テレビに写ってたよ〜とメールをくれた。

着物と帯と草履で夏の装いを身に纏って出掛けたハレの日は、
放送終了間際に映し出された映像と共に
良き思い出となりました。

tucasa_ryoufuutchakai_0715_R.jpg独立して12周年に
涼風茶会を催してから5年が経つ。

この5年で色んな経験をして、世界が拡がった。
17周年に感謝。



司建築工房

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2017年06月29日

リフォームはイタリアの広場

同じ愛知県民、将棋の藤井くんの活躍を嬉しく見守りつつ、

6月からマンションリフォームが始まった。
ほぼ毎日職人さんと現場で過ごしている。

完成のイメージを職人さんに直接現場でお伝えした方が
間違いがないし、僕が現場にいると、

配線の出し位置から実材料での組み方、原寸での納まり決定等、
職人さんが悩むことなく仕事に集中できる。

自分も現場を見て決定するのだから、迷いがない。

tucasa_ 054_R.JPG空間の改造は、壁を取り払うことで
すでに劇的に景色が変わった。

今回は最上階の角部屋で、
外周部と隣との界壁だけでなく、
天井部にも電磁波防止対策を施した。

それを覆う仕上げは何を選択するか。

tucasa_ 080_R.JPGリフォームなので、既存の下地の状況、
どういう方法で施工すると剥がれず(安全に)
綺麗に仕上がるか、

出来れば手間を掛け過ぎず(安価に)
行うかは毎回作戦検討で、
今回はラワンベニア。

きっちり際を合わせていく作業は手間が掛かるけれど、
さすが大工さんだ。

tucasa_ 099_R.JPG今回の現場を初めて下見した時、
イタリアの広場にしようと直感して、

天井の高低差で空間に深みを増し、
いくつかの立体造形を混在させて、

床、壁、天井、それぞれの素材と色で
調和を与えようと思っている。

建物の高さを揃え、
ヴァリエーションのあるファサードに統一性を与え、

柱廊などによって外部空間に連続性を与える
イタリアの広場。

リビングの中に浴槽とシャワーがある空間を
構築しているのだけれど、リビングを中心として、

キッチンと浴槽とベッドがそれぞれ、収納機能を持った
モニュメンタルなTVを囲む形になっている。

キッチンに立った景色、シャワー室に入る景色、
浴槽に浸かった景色、ベッドからの景色、
正面性と軸線が少なからず存在する。

tucasa_ 145_R.JPGさて、現場に浴槽を運び込んで設置し、配管をした。
今回はエレベーターに載せて搬入できるもので作る。

ここでも完成の床、壁のイメージ、設計寸法、
シャワーの位置出し等指示をする。

床の排水配管はいつも元の管底が決まっていて
余裕がないので水道屋さんの悩みどころ。

tucasa_ 143_R.JPG匂いが上がるのを避ける
排水トラップの取付けがいつも悩ましい。

すべての建築でそうだけど、
配管の不具合、
部品の不良などによる水漏れが

マンションではお施主さん並びに下階の方に
大変なご迷惑を蒙るので、

造成前に試運転と排水を繰り返し、念には念を入れる。
排水が逆流せずスムーズに流れるか、
実際排水の配管経路は一度やり直した。

ちなみに浴槽を囲むエプロン部分は和紙アクリルの光壁にして、
和紙アクリルを外せば内部照明の交換、
水道配管の点検ができるように計画している。

今日家具の詳細図を描いた。
材料手配、職人の段取り、現場の日々はまだまだ続く。


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2017年05月23日

villa grid HP UP

tucasa_villa grid_ 153.JPG2000年に独立して17年。
多くの方々のお陰様で、

海外での有意義なプロジェクトを
終えることができた。


ホームページWORKSに公開しましたので、
興味がございましたらご高覧下さい。

振り返ると、人生は偶然の重なりで、
若き日の人々との出会いがなければ、

今回のエキサイティングな経験はできなかっただろうと、ふと想う。
今まで関わって下さった方々の顔が浮かぶ。

日本では花々が淡々と咲き、新緑の季節を迎えたかと思いきや
もう夏の暖気がお出ましだ。

時の過ぎ行く早さに何の文句もないけれど、
文化財の消失と街並みの破壊のテンポは速すぎる。

戦後、産業の高度成長による開発事業によって
20世紀後半に多くの文化財が姿を消した。

例えばライトの帝国ホテルは1967年、
ライト未亡人が取り壊し反対の講演をホテル内で行ったその日、
未亡人の目の前で作業員を入れて石の解体作業が始まった。

戦禍を免れ、文化都市だった京都までもが
半世紀の間に多くの木造家屋が取り壊され、
90年代だけで、4万棟以上の古い木造家屋が消えた。

古いもの、自然なものは汚くて面倒で危険だと壊し、
ピカピカの工業製品を近代的で綺麗だと、
精気のない化学建材で作ることを選んだ人々が大多数を占めた。

全国どこに行っても看板と電線がひしめき合い、
公共施設はどこも土地の文化を取り入れず、画一的なフェイクばかり。

それでも繊細な感性を持つ人々は自分の好きな場所を見つけ、
観たい景色だけに焦点を絞って、残された自然や文化財を慈しむ。

日本には素材に対する美意識と世界に誇れる技術がある。

例えば昨年震災にあった熊本城の
あの安山岩の石組みは見事というしかない。
穴太衆(あのうしゅう)の眠り目地と武者返しの空間認識能力。

現代人ではできない技術や手に入らない材は保存し、
被害を受けても元の状態に近づくように修復に努め、
文化を守ることは残された国民の義務だと思う。

振り返れば、僕は若い頃から民家が好きで、
木や石や藁、土、紙、漆の温かい素材の生み出す
美しさ、テクスチャーに胸を躍らせた。

本物の素材で職人と誠心誠意ものづくりをしたいと思い、
90年代、数々の大先輩たちから勉強させて頂いた。

人生の先達たちの言葉には貴重な体験を経てしか
語りえない知恵が詰まっていた。

今でもその言葉は僕の胸の中で生き続け、指針になっている。

伝統と新しい施工技術を融合したら、快適で安全な建築が造れる。

tucasa_villa grid_ 034.JPG今回の建築は素材選びが
重要な要素だった。
それも現地で調達できる素材で。

木材は大陸の大地に相応しく
落ち着いた色味と
程良い野性味がほしかったので、

窓、ドア、テーブル、
机、棚はチェリーウッドにした。

赤味のある木肌で華やかさがあり、
適度な硬さと重さで、温かみのあるスベスベした手触り。

壁と天井は柔らかい赤味のあるレッドシダー。
新築した時よりも5年10年経って落ち着いて
美しさが増すことだろう。

tucasa_villa grid_ 263.JPGここは冬の寒さが厳しいので、
開口部はすべて二重で

外壁廻りの内側は
藁入りの黄土と炭(断熱)で
これだけで厚みが300mmある。

外壁はすべて地元で採掘された石を積み、
下地を入ると厚みが250mmあるから、
外周部の壁の厚みは550mmを超える。

床下にも炭と黄土で厚みが300mmあり、
小砂利の蓄熱層と温水パイプの床暖房システムになっている。

もちろん冬は暖炉で火のある暮らしだ。

空調の室外機も温水ボイラーも
建築の外部のどこにも見えないように
デザインの一体化を図っている。

これからも施主の良き人生の一部になれたら
どんなに幸せだろう。

そのために今、勉強したいことがたくさんあって、
好奇心が加速する。


司建築工房

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2017年04月15日

イロハモミジとの旅2

旅のお供、葉山のいろはもみじは
舞台正面の座席の僕の足元だ。

ナタリーデセイをコンサートホールで聴く
いろはもみじもそうはいないだろう。

私は歌う女優です、と云うデセイ。
今回は様々な個性を持つ女性たちの恋を歌う。

音楽の流れや言葉のつながりまで何度もリハーサルを重ねて
熟成させたプログラムとのことだ。

よく楽器の演奏で歌うように弾くっていうけれど、
音楽の流れに言葉を乗せて心を表現する。

外国の言葉はわからないけれど、歌い始めると
ガラッと世界を変えてしまう。

絵画でも工芸でも建築でも
画像と直接観ることの違いはあまりにも大きいけれど、

空気を伝わって直接響いてくるデセイの歌声は
異次元のものだった。

コロラトゥーラの華麗な技巧もさることながら
ピアニッシモの繊細で伸びやかな歌声は圧巻だ。

僕は、フィフス・エレメントの中でオペラを歌う場面の
ブルース・ウィリスのあの表情が頭に浮かんだ。

いい演奏にはいくつかの要素があると思うけれど、
一番は音そのものの美しさだと思っている。

デセイの歌声そのものが美しい。
日本的に言えば人間国宝だと感じた。

それとピアノのフィリップ・カサールが良かった。
最初のモーツァルトから引き込まれて、
まるで言葉を歌っているような演奏だった。

音楽を肌で堪能した特別な夜だった。

houshun 232_R.JPG筋書きのない旅は
まだまだ書きたいこともあるけれど、

いろはもみじは
僕のアトリエの木陰で
ひっそりと佇んでいる。



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イロハモミジとの旅1

アトリエの窓からは桜が輝き、鳥が歌う。
庭の木々の枝には芽吹いた若葉が萌える春。

houshun 037_R.JPGこれからある芸術家の
アトリエ兼自宅の設計を控えていて、

ナタリーデセイのリサイタルのため
上京する機会に
葉山の山口蓬春画室を訪ねた。

僕が勝手に師と仰ぐ吉田五十八の1954年の建築なんだけど、
長い年月の間に手が加えられていたのを
つい最近、原設計に復元する改修が行われた。

1940年祖師ヶ谷に建てられた旧山口蓬春邸は、
作品集を眺めるだけで、残念ながらもう現存していない。

houshun 153_R.JPG常に新しい時代の表現を求めた
同窓生の蓬春との建築は、
さぞ楽しく仕事をされたのではと想像する。

筆洗場や隠し戸棚、ガラスの飾り戸棚、書庫など
徹底した緻密さで構築した機能性と

建築美学を表現した画室は、
庭のいろはもみじの緑で照らされていた。

建築は元の場所でのみ正しく鑑賞され、
空間体験を通してのみ正しく建築家の意図を汲み取ることができる。

houshun 142_R.JPG花々が咲き匂う葉山のお庭では、
いろはもみじの花が咲き、

翼の種が風に運ばれ、
春に芽吹いた葉っぱが
地面に顔を出している。

僕は以前よりアトリエの庭にもみじが欲しいと思っていた。
それも小ぶりな葉っぱのいろはもみじが好きなのだ。

庭を管理されている葉山のおばさまが
「お持ちになる?」と声を掛けて下さった。

houshun 145_R.JPG根付かせるにはもう少し
根が張ったものがいいからと

運良く?草取りされずに残った、おそらく
発芽して3・4年目の若木を頂いたのでした。

思いがけず縁あって旅のお供が増えた。
とりあえず根っこをティッシュで包んで、細長い葉っぱで縛って。

磯の香りの風が心地よいバスに揺られて
軒先に吊るされたワカメと満開の桜を見送った。

houshun 173_R.JPG銀座並木通りのサンモトヤマを訪れるため
銀座風月堂でお茶をしていると

入口でお持ち帰り用のお菓子を
販売されている店員さんが、

お店で使っているというプリンのカップと
手提げ袋を持って来て下さった。

感動してしまった。

接客マニュアルがあるわけはなく、
カバンから顔を出したもみじを見られてのこの心配りは、
海外から評価されるまさに日本のおもてなしだった。

お蔭でお水を常に浸すことができるようになった。

「またお越しください」と笑顔でお見送り下さったのでした。

司建築工房

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